奏作空間

Reading & Creation Space "SOH"

スポンサーサイト

2015.02.13 Friday
0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    - | - | - | - | - |

    『電脳コイル 関西edition』第2話 前編

    2011.01.28 Friday 22:44
    0
       
       遅くなりましたが先日、ようやく小説版の最終巻を読み終えました。感想の方はまたおいおい取り上げることになると思いますが、アニメと同様に終わったところで爽やかな気持ちになれたのでとても良かったです。

       小説版を読破してとりあえず一言。猫目宗助、アンタいいやつだわ。こっちで悪く書くのが忍びないわい。(彼の悪人像はアニメを見直して再構築する必要がありますね。『春』では随分ご無沙汰ですが、そろそろ出番があるかも、ね。)

       それは置いておきまして、今週は『電脳コイル 関西edition』の第2話前編をお送りします。


      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       #02「メガシ屋の主、銭ゲばあ」 前編

       ホラー映画さながらに建設中の建物から姿を現したサッチー。その腹部に空を舞っていたキュウちゃんが合体する。
      「ボクサッチー。ヨロシクネ」
      「しゃべったあ!」
      「こっちや!」
       怯んだ小此木さんに声をかけて、ウチは黒バグスプレーを取り出し、右手の壁に散布しながら駆け出した。サッチーはまず黒バグの方に気を取られるはずや。その隙にウチらは振り返らんと来た道を戻るように逃げた。
      「あれは一体なんなの?」
       走りながら彼女が訊いてきた。
      「あれがサッチーや。撃たれたらメガネ壊されるで!」
      「ボクサッチー」
       やばっ。もう追いついてきてるやん!あんな巨体で、結構機動力もあるからほんま難儀な存在やで。
      「ああっ!鳥居は、鳥居はどっちや?」
       いらんこと考えてたら、頭の中の地図が飛んでもうた。もう、こんな時になにしてんのウチ!
      「ああ!」
       迷ってる間に、目の前にはキュウちゃんが現れた。ここは壁の出番か!
      「それっ」
       危ないタイミングやったけど、レンガ壁が開いてキュウちゃんをブロックした。すぐにキュウちゃんの光線が壁に向けられる。ウチはその間に必死に道を思い出そうとした。そうや!向こうに確か鳥居があったはずや!そっちの方を向いてウチはそれを確認した。
      「こっちや!」
       駆け出したところで、今度はさっきのサッチーが目の前に現れた。するとウチの手は反射的にメガビーの構えをとっとった。
      「ふっ!」
       サッチーの胴体から顔までをなぞるようにビームを浴びせかける。怯まずにしばらく照射し続けると、ついにサッチーの全体の画像が割れた。こうして文字化けしてるうちは、サッチーも動けんようになる。その隙に。
      「こっちや!」
       これで今日何回目やろ。ほんまこの子もよくついて来てくれるわ。ちょっと振り返ってみると、サッチーの方はすぐにバグが修正されて、さっきのキュウちゃんも合体して追って来るところやった。
      「うわっ!」
       その時ウチの目の前を猛スピードの車が走り抜けた。危ない危ない。歩行者信号は赤や。もう、こんな時に!
      「えっと信号、信号は......」
       ウチはポシェットのメタタグを急いでめくり始めた。欲しいのは信号を変えるヤツやけど、あれ?全然見つからへん!
      「来たあ!」
       小此木さんが悲鳴を上げる。まずいなあ。てか、なんであれへんの?ああ!そう言えばこの前、学校遅刻しそうになった時に一枚使うたな。もしかしてあれ最後の一枚やったっけ。仕方ないなあ。
      「信号なんて知らん!行くで!」
      「え?ちょっと、信号赤!」
      「大丈夫や!車はまだ遠いし、ウチらに気付いたら電脳ナビ制御で勝手に止まるようになってるから!ほら、はよう!」
       ウチは彼女の手を引っ張って横断歩道を飛び出した。赤信号、皆で渡ればってヤツやで。
      「ほら見て。サッチーは律儀に信号守るようにプログラムされてるから、渡ることはできひんねん」
       サッチーの顔が心なしかもどかしそうに見えるわ。所詮機械は人間様に勝てへんいうことやな!横断歩道も無事に渡りきったし、もう安心やと思ったその時やった。
      「サッチージェットキドウ」
       何やらサッチーが新語を唱えたかと思うと、突然尻の辺りから白いスモークが噴き出した。ウチは何が始まるんやろと思って、つい立ち止まって様子を見る。するとサッチーはなんと天高く飛び上がった。
      「うわっ!なんなんあれ!」
       まるでサッチーにはジェットエンジンがついてるかのようで、空を飛んで横断歩道を飛び越えるつもりらしかった。いつからあんな機能がついたんやろ!?とにかく全然安全確保はできてない。ウチはまた小此木さんの手を取って走り出した。鳥居はウチらの目の前や。
      「うわあ!来てるわよ!」
       小此木さんが振り返って叫んだ。サッチーは横断歩道を渡りきったところで着地したみたいやけど、十分にウチらとの距離はひらいてた。もうさすがに大丈夫やろと思って振り返ったら、またサッチーがおかしなことを言った。
      「サッチーミサイルキドウ」
      「サッチーミサイル?」
       今度はどんな技やろと見てたら、サッチーは突然腹這いの姿勢になった。あ、それもしかして、尻のジェットエンジン噴射して......
      「やば!早く鳥居の中へ!」
       ウチが叫んだのと、サッチーが発射されたのは同時やった。ウチらと鳥居までの距離はものの5メートル。サッチーとは50メートルは引き離してたのに、ほんの一瞬で、恐ろしいスピードで迫ってきた。その光景を目の当たりにしたウチはほとんど半泣きやった。
      「飛び込むんや!」
      「うわあ!」
       ウチらがギリギリ鳥居に飛び込んだタイミングで、背後からはサッチーが鳥居の結界にはじかれる時のものすごい音が聞こえてきた。一息間をおいてから振り返ってそれを見たウチは驚愕した。
      「うわあ。サッチーの頭の部分が鳥居の内側にのめり込んでもうてるやん」
       それはサッチーが見えない壁に突き刺さってるっていう感じやった。頭がのめり込んでるのは、さっきのジェットの勢いが余って結界の見えない壁も変形したからやろ。これはサッチーが鳥居の結界を破る日もそう遠くはなさそうやな。
      「ボクサッチー」
       サッチーは態勢を元に戻すと、何事もなかったかのようにその場を去って行った。それを見てようやくウチも小此木さんも大きくため息をついた。
      「助かったの、よね?」
      「うん。久々にこんな冷や汗かいたわ」
       ウチは境内の石段に腰を下ろして、息を整えることにした。

       小此木さんはちょうどこの境内の賽銭箱のウラに荷物を置いとったらしい。休憩も十分にとったところで、ウチらはデンスケの治療のためにメガシ屋に向かうにした。
      「いたたた......」
      「大丈夫?」
       彼女はいつの間にか擦りむいたらしい。
      「うん」
       ま、その程度なら問題ないやろ。ウチは彼女が荷物を持つ間に預かったデンスケを返した。随分ぐったりしてるから、早いところメガシ屋に連れて行ったらんと。
      「デンスケを助けてくれてありがとう。探偵さん」
      「フミエでえーよ」
       こんだけのピンチを乗り切った仲やからな。まあ、今後ともよろしく。
      「じゃあ、私のことはヤサコって呼んで」
      「ヤサコ?」
      「ゆうこのゆうは優しいって書くの。だから金沢ではヤサコって」
      「へえ」
       それは良いアダ名をもらってうらやましいなあ。ウチはフミエ以外の名前で呼ばれたことないし。
      「じゃあ、ウチのことは知事って呼んでもええで」
      「知事?」
       やっぱ大阪人やないとこのネタわからんか。大阪都を築いた偉大な人なんやけどなあ。
      「ううん。やっぱりフミエで」
      「そ、そう」
       ヤサコはきょとんとして話題を変えた。
      「ねえ。それよりさっきの赤いのどうしたの?」
      「サッチーは神社とか学校とか、家の中には入ってこれへんねん」
      「サッチーって一体なんなの?」
      「本当の名前はサーチマトン。略してサッチーな。大黒市の空間管理室が導入した、強力なウイルス駆除ソフトやねん」
       昔大阪の南海ホエールズで活躍した名捕手の奥さんの名前ではないので、そこは間違えないように。
      「でもすごいアホやから、メタタグとか、ちょっとルール違反のお茶目なアイテムも見境なく攻撃してくるねんなあ。ほんま迷惑やわ」
      「額から光線出すのがそれほどお茶目とも思えないけどね」
       ま、それはアンタもこの街に慣れてくれば当たり前の光景になることやけどな。
      「とにかく、はよデンスケ治療しよ」
      「うん」
       ウチは歩き出したけど、ヤサコはまだ何か気になることがあるみたい。
      「どうしたん?」
      「......ねえ、この辺って神社多いの?」
      「神社?古い街やから、いっぱいあるで。おかげでサッチーから逃げやすいねん」
       ヤサコはウチの言葉を聞いてるのかどうかわからん様子で、じっと奥にある並んだ鳥居の方を見やった。
      「ねえ、鳥居がすごくいっぱい並んでる階段ってどこかにない?」
      「この辺りで?私、生まれてからずっと住んでるけど、知らへんなあ」
      「そう......」
       なんでそんなこと訊くんやろ。
      「さ、行こ」
      「うん」
       今度こそウチらは歩き出した。すると鳥居を出たところで、ヤサコがまた別の質問をぶつけてきた。
      「ねえ、フミエちゃんって生まれてからずっとこの街なの?」
      「そう言ったやん」
      「じゃあなんでそんなしゃべり方なの?お父さんかお母さんが関西の人とか?」
       それは初対面の人には必ず聞かれることや。
      「ううん。別にそういうわけでもないねん。ウチがこんなしゃべり方なんは、多分ものすごい深い事情があるんやと思うし、もしかしたらウチがそのきっかけを忘れてるだけなんかもしれんけど」
      「理由はわからない?」
      「そ。まあ、この方がなんか人ととっつきやすいし、ええかなあって。直す気はないねん」
      「そうなんだ。違和感もないし、かわいらしくてすごくうらやましいな」
      「おおきに」
       ウチ、ヤサコとは良い友達になれそうやわ。こうやって巡り会えたのも、何かの縁かもしれへんな。

       さて、もうすぐメガシ屋が見えるところまで歩いて来て、またヤサコが訊ねてきた。
      「ねえ、心当たりってどこ?」
      「薬を売ってるところやで。ちょっと怪しいけどな」
      「もしかして、またメガシ屋?」
      「当たり。メガネの駄菓子屋で、メガシ屋いうねん」
       そしたらヤサコは眉間に皺を寄せて立ち止まった。
      「待てよ。駄菓子屋?」
      「どうかしたん?」
      「ああっ!」
       ちょうどメガシ屋が見えたところで、ヤサコは急に声をあげた。
      「なんなんなんなん?」
      「あそこ。私のオババの家......その隣が、私が引っ越す家......」
      「えっ?」
       とんだ偶然やなあ。ん?今オババって言った?
      「もしかしてアンタ、メガばあの孫?」
      「メガばあ?」
      「あの店の主のこと。本名は知らんけど、そう言えば、確か名字は小此木だったような」
       ウチは思わず手を口に当てた。この子があのメガばあの血を引いてるなんて。わからんもんやなあ。
       まあ、それやったら話は早いやろ。ヤサコかてメガばあのことは多少聞いてるやろし。とりあえず店の中に入ろうとしたら、そのメガばあと知らへん女の人が店先でなんか口論してる最中やった。
      「お義母さん!なんでこんな看板勝手につけたんです!?前来た時隠してたのはこれだったのね?」
      「ワシの土地じゃあ!ワシが何しようと勝手じゃあ!」
       えらいお取り込み中やなあ。会話の内容からして、メガばあと言い合ってる女の人はヤサコのお母さんかな?まあ、ちょっと入りにくいところではあるけど、ウチらもちょっと急いでるし、声をかけることにした。
      「メガばあ!なんかちょーだい!」
      「おおっ!フミちゃん聞いとくれ!この鬼嫁がいじめるんじゃあ!」
      「何言ってるんですか!恥ずかしい!」
       怒ってはるなあ、あの人。ま、メガばあが誰かと揉める時はたいていメガばあの方に非があるからな。ウチはそれはほっといて、ヤサコにメガばあを紹介することにした。実の孫に紹介いうのもおかしな話やけど。
      「ヤサコ。紹介するな。メガばあやで」
       って、あれ?ヤサコどこ行った?と思ったら電柱の陰に隠れとった。
      「だからイヤだって言ったのよ。オババのところに引っ越すの」
       なんかワケアリやな。後で詳しく事情は聞いたろか。

       しばらくするとどうやら嫁姑の争いは一段落したようで、メガばあはまた店番に戻った。早いところここで買い物しないと、デンスケがずっとへこたれててかわいそうやのに、ヤサコはなかなか入ってこうとせんかった。そんなヤサコをウチはムリヤリ店先まで引っ張ってきた。
      「なあ、どうしたん?」
       メガばあにえらいトラウマ抱えてるようやけど。
      「私、オババ苦手なのよ。がめついから」
      「アハハハッ!それわかるわあ!なんたって、世間じゃメガばあで一応通ってるけど、ウチらの間じゃ銭ゲばあって呼ばれてるぐらいやからな」
      「銭ゲばあ?」
      「お金にえらい執着してる人のことを銭ゲバって言うやろ。まあ、ほとんど死語やけどな。そっから銭ゲばあ」
      「フミちゃん。しっかりと聞こえとるぞ」
       げ。メガばあもそろそろ耳が遠くなってると思ったけど、そこら中にきこえる君でも仕掛けてるのかもしれへんな。あの人ならやりかねん。
      「ねえ、その薬っていくらぐらいするの?」
       ヤサコがおそるおそる訊いてきた。
      「そうやなあ。400メタくらいかなあ」
      「400メタって?」
      「大体400万円」
      「よ、よんひゃくまんえん!?」
       するとヤサコの目は飛び出さんかぎりに見開かれ、髪は天をつくように逆立った。
      「あ、そっから消費税の18パーセントが加算されるから、472万円になるなあ。メタで払えば消費税は割引きしてくれるけど、近頃メタバグって落ちてないねん。私も今メタバグの持ち合わせがないし。せこい商売やろ」
       つまり、400メタ相当の買い物をする時に400メタ分のメタバグを渡せばそれで買える。それは当然やな。そしてそれを現金で買おうとすると472万円必要になる。ところが、メガシ屋でメタバグを現金に変えようとする時、400メタ相当のメタバグを銭ゲばあは400万円でしか買い取らん。差額の72万円は換金手数料っていう名目でメガばあの懐に入る。その辺の銭ゲばあの悪徳商法について、ウチはこんこんとヤサコに説明した。
      「オババ、今でもそんなことしてるのね......」
       ヤサコは半ば呆れ気味やった。
      「いい?これからその薬を買うわけやけど、銭ゲばあは滅多なことじゃ値切らへんからな。足元見られると逆に値段つり上げてくるぐらいや。だから、絶対に弱みを見せへんこと。ここで買い物する時の鉄則や」
       これが長年ここに通ったウチの経験則やった。ここでの買い物は常に銭ゲばあとの勝負や。
      「できるかなあ?」
      「今回はウチが手本を見せる。よく見て技を盗むんやで」
       そうしてウチは勇んで入店した。ヤサコもウチの後ろに隠れるように入ってくる。
      「メガばあ。なんかちょーだい」
       これは宣戦布告の挨拶でもある。
      「それはこっちのセリフじゃ。今日はワシの息子夫婦と孫が引っ越してきたでの。引っ越し祝いになんかちょーだい」
       そう来たか。それは墓穴やで銭ゲばあ。
      「メガばあに引っ越し祝いは関係ないやんなあ?メガばあが越して来たわけやないねんから。むしろ、今日引っ越して来たこっちのお孫さんに何か引っ越し祝いを渡すべきやないの?」
       すると銭ゲばあは少し唸った。へっ、一本取ったんとちゃうか。すると銭ゲばあはヤサコの方を見た。
      「のう、優子。お主とワシは今日からお隣さんじゃ」
      「お隣さんって言うのかな。ほとんど同居だと思うけど」
      「どっちでもええが、これからお世話になる隣人に引っ越しの挨拶はないのかのう。なんかちょーだい」
       あかん。標的がヤサコになってる。このままやとヤサコがなんかカツアゲされそうやったから、ウチは間に割って入った。
      「ああ、もう。せやったら、お互い贈り物はなしで、挨拶だけしたらええんとちゃうかな」
      「そうじゃのう。優子、これからよろしくのう」
      「よ、よろしくオババ」
       これで場は仕切り直しやな。まったく相変わらず手強いバアさんやで。
      「んで、フミちゃんは何をしに来たんじゃ?」
      「買い物よ!ちょっと装備品を見に来たの!」
       タダで何かもらう作戦は諦めて、ここははっきりと言った。ここからがほんまの値切り戦争のはじまりやで。

      (後編に続く)

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       今週は以上です。早くも設定が崩壊し始めましたが、まあアニメとまったく同じというのも面白くないので。これからもだんだんぶっ飛んで来ると思います。次回は電脳グッズ値切り戦争勃発。なんか趣旨変わってきてますよね。早くイサコ出ないかなあ。

       それではまた再来週。









      『電脳コイル 関西edition』 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

      スポンサーサイト

      2015.02.13 Friday 22:44
      0
        - | - | - | - | - |

        コメント

        コメントする










        この記事のトラックバックURL

        http://spring-coil.jugem.jp/trackback/83

        トラックバック