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2015.02.13 Friday
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    『大黒市黒客クラブ戦記』 epilogue

    2010.07.09 Friday 22:26
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      『大黒市黒客クラブ戦記』 epilogue
       
       2026年 10月下旬

       天沢勇子の加入により、彼女の運命に巻き込まれるという波乱の夏を乗り越えた『黒客』。その天沢勇子、イサコは一連の事件が解決した後、金沢に戻ってしまった。そうしてダイチは再び『黒客』のリーダーに返り咲くこととなった。しかし、好きなだけ『黒客』を引っ掻き回してくれたイサコだったが、いざいなくなってみるとメンバー達はなんだか寂しいような気持ちに苛まれていた。彼女に追放されたダイチでさえ、そう感じていた。もう1度、イサコに勝負を挑んでみたいという気持ちもそこにはあった。
       しかし一連の事件の収束後、大黒市からメタバグは消えてしまった。もう戦争だの鉱脈だのと言って走り回ることもなくなった『黒客』は、事実上の活動停止状態になっていた。そんな腑抜けたダイチ達に声をかけたのはハラケンだ。
      「よかったら、もう1度電脳生物部の活動に参加しないか?」
      ダイチは喜んでその誘いを受けた。かつては自分たちが好き放題してメチャクチャにしてしまった生物部だったが、ハラケンはそんなことを気にもとめずに笑顔で誘ってくれた。一連の事件を乗り越えてどこか吹っ切れたハラケンに力を貸してやろうというところで、『黒客』は再び電脳生物部の正規部員として舞い戻ったのだ。折しも、もうすぐ文化祭が迫っていて、そこでは電脳生物部の研究発表が行われることになっている。『黒客』は電脳生物部の部員、ハラケン、フミエ、ヤサコ、アイコらと力を合わせて、この最後の仕事を全うしようと心を決めた。

       と、言いつつ、普段から研究や勉強などとは無縁の生活を送っていたダイチ達は、どうにもこういう活動には慣れていなかった。この日も放課後に駅ビル新校舎の第一理科室で資料のまとめ作業を任されていたのだが、いつもの癖でうだうだとだべり合っていた。メンバーはいつもの通り、ダイチ、ガチャギリ、ナメッチ、デンパ、そしてアキラだ。
      「いや〜懐かしいな。こんなこともあったあった」
      その時ダイチが、自分のウインドウで開いていたテキストを読みながらしみじみと言った。
      「なに読んでんだ?」
      ガチャギリがダイチに訊ねる。
      「『黒客』の活動記録だよ。ちょっとメガネのデータ整理してたら出て来たんだ」
      ダイチが読んでいたのは、『黒客』の活動の軌跡が書かれていたテキストだった。それは活動中、財産管理に几帳面なガチャギリが、いつどこの戦いでいくら稼いだかなどを詳細に記録していたものだ。ダイチはそれを古い自分の作文を思わずめくってしまうかのように読みふけっていた。
      「ああ、それか。イサコに乗っ取られてからつけなくなったな。って言うか、イサコとの戦いでいくら損したか考えるのがイヤでつけるのをやめたと言った方が正しいか」
      ガチャギリが苦笑いを浮かべながら言う。今考えてみれば、あの時のダイチのくだらない提案がすべてを変えてしまったなと、メンバーは思いふけった。その時理科室の扉が開いた。
      「あ〜。『大黒黒客』またさぼってる〜」
      中に入って来たヤサコが、「いけないんだ〜」とでも言うようにダイチを指さした。
      「なんだヤサコか。休憩だよ休憩。もうすぐ再開しようと思ってたところだ」
      「休憩って、まだクラブ活動の時間が始まって15分しか経ってないんですけど。ところでそれなに?」
      ヤサコもダイチが読んでいたテキストが気になって訊ねてみた。
      「これ?これは、さしずめ『大黒市黒客クラブ戦記』だな。イサコに乗っ取られる前の『黒客』の活動が事細かく記録されている」
      「へ〜、おもしろそう。見せて見せて」
      「いいぞ。ほれ」
      ヤサコがねだるのでダイチはウインドウをヤサコに手渡した。
      「すごーい。ダイチ君達って、こんなに色んなところに戦闘に出てたんだ。私てっきり天沢さんにコテンパンにされたものだから、『黒客』って大したことないんじゃないかって思ってたわ」
      「おいおい。イサコは、バケモノ。人じゃないからな。イマーゴに加えて暗号まで使って来られたら、そりゃ勝ってこねえよ。でもまあ、イサコ以外に敵がいなかったのは本当だぜ。フミエだって1回フルボッコにしたことがあるからな」
      ダイチが少し得意になってヤサコに言った。
      「えっ?フミエちゃんと戦って勝ったことがあるの?そんな話、私聞いたことないけど」
      ヤサコが驚いて聞き返す。
      「まあ、フミエらしいな。自分がオレたちに負けたことなんて、わざわざヤサコに言わないだろう」
      ガチャギリがダイチに言った。その時タイミング良く、フミエとアイコも理科室にやって来た。2人は今日は掃除当番で来るのが遅れたのだ。
      「やっぱり。なにもやってないじゃない!わかってる?あと文化祭まで10日切ってるのよ!早く資料まとめてくれないとパワーポイントに落とせないじゃない。それになにヤサコもコイツらと一緒になってサボってるのよ......」
      フミエが呆れたようにその場にヤサコやダイチ達を見た。しかしそのヤサコやダイチ達の目がにやけているのに気がついた。
      「な、なによ?」
      「フミエちゃん。フミエちゃんってダイチ君達に1回負けたことがあるの?」
      「はあっ?な、何の話?」
      ヤサコの問いに少しとぼけるようにフミエが返した。
      「またまた〜。ダイチ君達から聞いたよ。コテンパンにされたんだってね。その話、フミエちゃんの口から聞いたことがなかったんだけど。なんで今まで話してくれなかったの?」
      ヤサコがいじわるな顔になってフミエに迫った。フミエは困り果ててこう切り返した。
      「き、聞かれなかったからよ!」
      「どういう理屈だよ」
      ガチャギリが息をつきながらツッコんだ。その場の全員から笑みがこぼれる。ひときわ大きな笑い声を上げたアキラをフミエはどつきあげた。
      「なんでそんな話になってるのよ。忘れましょうよ、その話は。あっ、ヤサコの持ってるウインドウ。それを見たのね」
      それに気付くとフミエはヤサコからウインドウをかっさらって中身を読み始めた。
      「あっ、おい!プライバシーの侵害だぞ!」
      ダイチがウインドウを取り返そうとフミエに迫る。しかしフミエはダイチを可憐な動きでかわしながら目を通し、あることに気がついた。
      「アンタ!『黒客』が大軍に攻められてアンタのメガネも壊された時に、私が助太刀して『黒客』を助けてあげたこと、ここにはひとっことも書いてないじゃない!」
      「えっ?」
      フミエの言葉に驚いたのはヤサコだった。フミエが『黒客』を救ったなんて今では考えられないことだ。
      「そ、そんなこともあったか?ただの書き漏れじゃなねえか。いちいちそんなこと気にすんなよ」
      ダイチもとぼけるようにケロっとして返す。しかしフミエは許さなかった。
      「アンタ、自分たちに都合のいい歴史だけ残してそれを見せびらかすなんて、どんだけ小さい男なの?背も小さければ心も小さいってか!えっ!誰のおかげで今のアンタ達があると思ってんだ!」
      フミエはそう言いながらダイチのほっぺたを両手で引っ張り始めた。
      「はめろ!ほまへにはふへをもほめはほもえはなひ!」
      ほっぺたを引っ張られたダイチは何を言っているのかわからなかった。
      「今日もこの2人の部活が始まったわね」
      アイコが呆れながらどことなく嬉しそうに言う。
      「それにしても、なんであのフミエちゃんが『黒客』を助けるようなことをしたの?」
      フミエとダイチがつかみ合いをしている間、ヤサコがガチャギリにそのことを訊ねた。
      「なんか、オレたちと勝負をしたかったらしいぜ。その戦いでオレたちが負けたら、オレたちが解散するとフミエは思い込んだらしい。その時はフミエとナメが組んで敵の大軍を撃退したんだ」
      「そうなんだ。意外な組み合わせだね」
      ヤサコがナメッチを見る。
      「あん時は必死だったッスからね〜。オレッチもなりふり構っていられなかったっていうか、フミエのおかげでまあ助かったのは助かったんだけど。でも結局最後のおいしいところはダイチが持って行ったけどね」
      懐かしそうにナメッチが話した。その間にフミエとダイチの部活は終わったようだった。
      「まったく、こんなことをしに来たんじゃなかったわ。さっさと資料のまとめやりなさいよね。少なくとも今日中に終わらせて。時間がないってハラケンも困ってたわよ」
      フミエがまじめにクラブ活動の話に戻した。副部長として締めるところは締めるという責任もある。
      「わかったわかった。こんなのオレたちが本気出したら1時間で終わるって。てかさ、これイリーガルの研究だろ。これを文化祭で発表するって、メガマス的にはOKなの?イリーガルの存在はまだメガマスも公式には認めてないんじゃないのか?」
      「今さら?前に言ったじゃない。この研究発表についてはヤサコのおじさんが公認してくれたって。余計な心配してないでさっさと作業を始めなさい。これは副部長命令よ」
      「なんだよ。その副部長の肩書きもオレたちが1回辞めたおかげで手に入れたくせに」
      厳しいフミエにダイチがぶつぶつと文句をたらす。
      「アホか。アンタ達がやめる前から私は副部長だったわよ」
      「そのくせに新部長選挙でハラケンに負けたのか」
      チクリとダイチが言い放つ。その言葉にまたフミエのスイッチが入った。
      「お前それもっぺん言ったら泣かす!絶対泣かす!」
      「ちょっとフミエちゃん落ち着いて」
      キリがないのでヤサコがフミエを制止する。その時、部長のハラケンが顧問のマイコ先生と一緒に理科室までやって来て扉を開けた。
      「ああ、ちょうど良かった。みんな揃ってるね。少し騒がしかったけど、何かあった?」
      ハラケンが中にいた部員達を見て訊ねる。
      「部長!副部長が僕らをこき使おうとするんです。自分の仕事を僕らに押し付けたりして、副部長の横暴には僕らいつも困ってます。何とか言ってください」
      ダイチがへりくだってハラケンに言った。
      「え?まったくしょうがないなフミエは。ダメじゃないか。いくら立場が上になったからって、ダイチ達をこき使わないように」
      「はあっ!?なんで私がそんな言いがかりつけられなきゃいけないの!?サボってるのはあのチビだから!考えたらわかるでしょ!この青二才!」
      何を勘違いしてかフミエの方をたしなめたハラケンにフミエはプッツンした。それを見ていたマイコ先生が落ち着かせる。
      「はいはい橋本さん。文句があるなら後で聞いてあげるから。それより部長の原川君から話があるそうよ」
      「話?」
      それを聞いて部員達はハラケンのまわりに集まった。
      「うん。実は、研究発表の構成を練り直そうと思ってね。いくつか案を作って来たんだ」
      「ちょっと待って。本番まで10日もないのに、全部作り直すの?アンタどれだけ生真面目なのよ。今のままで十分じゃない」
      時間がないところに持って来て仕事を増やそうとするハラケンにフミエが異議を唱える。ハラケンはやると決めたら妥協はしない男だ。
      「まあまあ、そう言わないで。原川君も、より良い発表のためにベストを尽くそうとしているだけよ。これが生物部としての最後の仕事なんだし、ラスト10日、踏ん張ってみたら?」
      マイコ先生がフミエを諭す。それで間に合うのかとみんな黙って考え込むが、沈黙を破ったのはダイチだった。
      「しゃーねえ。やるしかねえっしょ。生物部としての最後の仕事、やりきってやろうぜ」
      ダイチの言葉にハラケンはホッとして微笑んだ。
      「返事だけはいいのねアンタ。でもまあ、できないことはないか。いいわよ。やってやろうじゃないの」
      フミエもダイチばかりにいいかっこさせられないと話に乗った。その後、ヤサコやアイコ、『黒客』部員達もハラケンの提案に賛同し、さらに気合いを入れた。
      「ありがとう。で、多分今のままじゃ厳しいと思うから、今度の土曜日にプチ合宿を張ってそこで追い込もうと思うんだ。先生からも許可が出たから」
      「鬼かアンタは!」
      フミエとダイチの声がきれいに揃う。恐ろしい提案だったが、しかしみんなそれも悪くないとも思った。夏の合宿は対立していたおかげで生物部らしいことをしていない。そういう意味ではプチ合宿ではなくて、ガチ合宿になるんじゃないかと全員が思った。

       それでも、ここに来て無理難題に挑んだおかげで生物部の結束は固まった。ガチ合宿では朝早くから来て夜遅くまで作業をしたが、合間にはマイコ先生の手作りカレーや、教頭先生の差し入れのお菓子などが振る舞われ、なんだかんだで楽しいものとなった。

       そうして迎えた文化祭の当日。部員達の高いメガネスキルに裏付けられた研究発表は、各所から高評価を受け、文化部の研究発表部門では最優秀賞を授与されることとなる。

       こうして電脳生物部の6年生達は、部としての最後の仕事を全うした。同時にこれは、『黒客』が小学校時代の最後に残した成果となった。

       『大黒市黒客クラブ戦記』 epilogue(完)


       と、いうことで、どうも川島です。『黒客戦記』は先週はで完結したはずだったんですけど、未練がましくもう1本執筆してしまいました。今日から通常回に戻すと予告していたんですけど、何書こうかなと悩んでいたんですよね。色々考えたんですが、「そう言えば、電脳生物部ってあの後どうなったんだろう?」っていう疑問が降りてきましてですね、生物部が最後に丸く収まる話を書こうかなと思い、昨日の夜、2時間で書き上げました。

       先週のあとがきや、下のコメント欄のところでも書いたことなんですけど、『黒客戦記』のダイチのキャラや、フミエとの絡みの温度って割とクールなんですよね。これのルーツってどの場面から来ているのかなと自分でも思っていたんですが、最近それに思い当たるシーンを思い出しました。

       オフィシャル小説の第3巻、廃工場の話なんですが、ダイチとフミエが雨宿りに倉庫で2人っきりになり、その会話をハラケンが聞くというシーンがあります。あの時のこの2人の会話の温度っていうのが、実に僕の中では印象に残ったんですよね。張り合ったりするのは変わりないのに、それは静かで穏やかで、これが本来の2人に近いんだなとハラケンも言っています。

       おそらくダイチはみんな見ている前だからこそ、そうやって大げさにフミエにも絡んでいくんですよね。それはある種の照れ隠しでもあると思います。でも本来は、こういうクールさを孕んでいる男なんだと思いますね。『黒客戦記』の場合、常に一緒にいるのが互いのことなど勝って知ったる『黒客』メンバーなわけで、ダイチも無意識に地を出しているような気がするんですよ。それが『黒客戦記』のダイチ像につながったのかなと思います。

       さて、このスピンオフ小説シリーズなんですが、最初に色々タイトルをあげたんですけど、この調子で行くとすべてのタイトルをこなすのはムリ、というのは身にしみてわかりました。そのうちのフミエちゃんを主役とした『電脳探偵007』と、『電脳生物部の凋落』の2つは話が『黒客戦記』と被ってしまいそうなので、おそらくやることはないと思うんですよ。『黒客戦記』でもフミエは思いのほか存在感を示しましたからね。

       それで次のタイトルは何にしようかと思っていたんですが、ちょっと今やろうかなと思っているテーマがあるんですよね。今日はそれを紹介します。スピンオフ小説というわけではないんですが。

       タイトルは仮題ですが、『電脳コイル 春 第2部 -大黒市編-』としておきます。タイトルで察しはつきますかね。『春』のサイドストーリーのようなものです。

       現在第2部の金沢市編が淡々と進行していますよね。ずーっと金沢市メインで時計の針は動いており、第2部の終了後はもちろんその時間軸を引き継いで第3部の話に突入するわけです。となると、大黒市におけるヤサコ達の中学校生活の大切な入学からはじめの1ヶ月ほどをすっ飛ばすことになるんですよね。

       ぶっちゃけますと、第3部で再び舞台は大黒市に戻ってきます。しかし、その時はヤサコ達もある程度中学校生活に馴染んできており、どういう生活をしてきたのかは描ききれないところで、読者が置いてけぼりになってしまうんですよね。とりあえずの説明はするつもりなんですが、第3部はもう走り始めると止まらないぐらいのテンポがほしいなと思っているところなので、それも簡単に済ませるつもりでした。しかし、どうしてもその1ヶ月の空白は気になりますよね。僕自身もイメージを立てる必要があるので、せっかくなのでこのブログでその様子を描写していこうかなと、そう思っている次第です。都合のいいことに、金沢で事件が起きている時には大黒で事件は起きないことになっているので、ほのぼのとした学園生活を描き出せるかなと。

       いつ書き出せるかはわからないんですが、少なくとも第3部に入る前までには書き上げたいところですよね。おそらく連載は来月に入ってからになると思います。『黒客戦記』のように長くなることはないと思うので安心してください。4〜5エピソードくらいに収まればと思います。

       そこでちょっと皆様にお聞きしたいことがあって、ヤサコ達コイルメンバーの中学校でのクラス分け、そしてヤサコ達がどのクラブ活動に入るのか、それがまだ決まってないんですよね。この設定は物語の本筋にも絡ませようとも考えていないので、自由に決めようと思っています。そこで皆様の希望というか、「自分の中ではヤサコはこのクラブに入ってると思う」とか、「こんなクラス分けにしてほしい」というのがあれば、下コメに書いてください。クラスは1学年4クラスくらいで考えています。ちなみに、中学校に電脳生物部はないという設定を確か第2話くらいで書いていたような気がするので、生物部はなしということで。もちろんヤサコ以外のメンバーの部活も希望を聞かせてください。これについては今日から1ヶ月ほど募集しようと思います。皆様のご意見お待ちしております。もちろんこの設定は、『春』本編にも第3部より反映されます。

       それでは本日はこの辺りで。次回は「川島の本棚 第2回」を予定しています。
       
       







       

       
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      2015.02.13 Friday 22:26
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        コメント

        こんにちは、此花です。

        雨響さんはそういうお年でしたか。思わず遠い目になりつつ、「懐かしさ」という点は共通している辺り、なんとなく安心しました。この作品、序盤は色調を淡く抑え、徐々に通常に戻していったという話を聞いた覚えがありますが、物語の前半はまさにそういう、わずかに色褪せたような郷愁を感じさせますね。
        川島さんは、やはりハラケンの心情に深く分け入った回ですね。あの話でのヤサコとハラケンのすれ違いの描写は本当に緻密ですよね。ハラケン、カンナに関わる話だと、第10話『カンナの日記』もいいですよね。ハラケンがカンナの手紙を読むシーンは屈指の名場面ですし、その前、日記を探しに塀の上を歩いたりするカットは、そういやこんなことやったなあという懐かしさがありました。

        さて前回保留にしてしまった私の好きなエピソードですね。実は発案者たる私も好きなエピソードはたくさんあって、1つ決めるのは難しいのですが、最終話を別格としてあえて挙げるなら、第24話『メガネを捨てる子供たち』でしょうか。

        媒体がアニメであれ小説であれ、私が「物語」を読む時に一番重視しているのは、ストーリーの流れと登場人物の意識の流れが不可分に結びついているか、ということです。
        前段として、第23話でメガネと意識の結びつきが明らかになり、本来ストーリー進行の道具にしかならないメガネというガジェットと登場人物の心理がつながった点に、私はかなり画期的なものを感じていました。
        ところが第24話でもろもろの事情を知らないヤサコの母により、メガネのない現実はメガネを通した架空の世界よりよいという、一般論に近いところでの結論が出されそうになる(別にそれが悪いと言っているわけではなく、ヤサコたちの手繰ってきた物語と、お母さんたちが日常を過ごしてきた物語とは違うものだった、ということです)。で、それに対してヤサコはどんな決断を下すか、なんですが、これが夜中にヤサコがひとりで考えるシーンですね。メガネのない世界と、デンスケのいた電脳の世界と、果たして優劣はあるのか、どちらがより「本当」なのかとヤサコは考え、そしてそう考えること自体に意味がないことに気づく。大切なのは自分の心の痛み、電脳であれ現実であれ、自分の心がそれをどう受け止めたかなのだと。最終話への展開につながるヤサコの行為の原動力はこの決断に依っていますし、これが『電脳コイル』に込められた1つのメッセージだと思います。

        次に、川島さんのお題、クラス分けは、そうですね、私の考えだけを言わせてもらえば次の振り分けになります。

        1組:ヤサコ
        2組:フミエ、ハラケン
        3組:ナメッチ、アイコ、デンパ
        4組:ダイチ、ガチャギリ

        1組、ヤサコはここでぽーんとひとりっきりにしてしまったほうが本人のために良いのではないでしょうか。これは第3部に新キャラを加えるかどうかとも関わってきますが。
        2組のフミエはヤサコと離れ離れになってしまったのを残念に思いながらも、ハラケンとヤサコをくっつけるべく奔走する。が、恋愛音痴のために大抵ずれていて失敗する。
        3組のナメッチは最初デンパとつるむが、あのとおりマイペースなデンパに付き合い切れず、次第に孤立感を深める。そんなおり、家庭科の実習か何かでアイコに料理の腕をほめられ、いつの間にやらそちらの道に邁進していく。
        4組、ダイチとガチャギリは、中学生になってもいろいろしょうもないことを企んでいそうな気がしたので取りあえずペアにしてみました。
        それからクラブ活動は、上の流れからナメッチは調理部。他は特にないんですが、フミエについては、磯監督のインタビューで、「将来は文学少女」なんて驚くべき発言がありましたので、何の間違いか文芸部に入ってしまうというのも面白いかもしれません。

        なんか勝手なことばかり言って申し訳ありません。本日はこの辺で失礼致します。
        | 此花耀文 | 2010/07/12 2:00 AM |
        どうも、川島です。

        前回の此花さんのサッチー導入の意図に関する見解については、設定が細か過ぎて驚きました。制作者もそこまで意図していないでしょう、きっと。その想像力を僕にも分けてください。

        ということで、今回のお題は好きなアニメのエピソードですか。確かに雨響さんのおっしゃる通り、第一印象っていうのは忘れないところですよね。そういう意味ではこの作品で初めて僕の琴線に触れたのが第4話の「大黒市黒客クラブ」でしたから、この話は好きですね。しかし、第4話が好きなのはこのブログで散々言って来ているので、今日はもう1つ僕の好きなエピソードを紹介します。

        色々候補があってどれも捨てがたいのですが、最も気に入っているのは第17話の「最後の夏休み」ですね。タイトル的にも1番好きだったりします。

        このエピソードの見所は、やはりなんと言ってもヤサコとハラケンの図書館前での2人の会話ですよね。伏線はこの前の「イサコの病室」からありまして、ヤサコはイサコから直接兄のことを聞く。ハラケンは小さな新聞記事からイサコの兄のことをおぼろげに知る。そうしてこのシーンでヤサコがイサコの兄についてハラケンに話すんですよね。そこでハラケンはイサコの行動の目的を知り、ミチコに会うためにイサコと接触することを決意する。

        ここで「最後の夏休み」という言葉を巡って、2人の中にあったそれぞれの感情が膨らんでいくんですよね。そうしてすれ違う切なさ、2人の間に横たわる温度差、それらは見ているこっちの胸が締め付けられるような気分になります。夕陽を浴びて語り合うという演出や、BGMの旋律の切なさなどもあいまって、ここで僕は毎回泣いてしまいますね。

        その後はガチャギリやナメッチも参戦したVSサッチーのアクションに場面は変わっていきますが、ハラケンがイサコに取引をもちかける最後の場面もしびれるんですよね。サッチーへのアクセスコードを君に教える、「かわりに、僕を”あっち”に連れて行ってくれ」というところで切れるんですよね。ここは初見で震えた覚えがあります。僕の中では電脳コイル熱が最高潮に達した瞬間でしたね。そんなわけで、僕の大好きなエピソードは「最後の夏休み」です。

        次のネタ振りは順番では僕なんですけど、ブログ本文でも書きました通り、中学生になったコイルメンバー像っていうのを教えてください。参考にさせていただきます。それでは本日はこの辺りで。


        | 川島奏 | 2010/07/10 11:12 PM |

        こんにちは雨響です。
        前回はお二人共鋭く深いご意見ありがとうございます。やはりお二人とお話していると自分の考えは浅いな、と痛感致します。
        お二人共文系でしたか、いやはやそう言いつつも的確な考え方に本当毎回感服します。
        とりあえずまだ見ぬ微分積分に今から怯えております。

        さてお題は一番好きなエピソードですか。
        そもそも私はコイルを見始めたのがアニメ本放送時序盤、第3話目のイサコが鳥居を描いてる所あたりを偶然目にして何となく見てる内にそのまま「何これ面白い!」とのめり込んでいったんですが。
        すごい懐かしさを感じたんですよね、色使いから町並みから雰囲気からもう全部に。
        それでいて新しい面白いものにわくわくする、そういえば小学校の頃が一番色々なものを楽しんでいたな、と頭の片隅で思いながら。
        きっと一緒にメガネ遊びをしていたんじゃないかな、なんて今では思ってたりします。
        だからなのかはわかりませんが、とりあえずアニメの中で一番惹かれるのは序盤…大体9話辺りまでの、子供達がバカやりながら走り回っているようなあの感じだったりします。
        黒客メンバーが出てくると無意識にわくわくしてました。
        なかでも夏合宿の肝試し対決は黒客が出てるってのもありますが、マイコ先生じゃないですけど小学生みんなが集まってわちゃわちゃやってるのが楽しそうだなぁと、というか楽しんでましたね。途中から楽しめないような展開だったのに。
        でもコイルは中盤も終盤ももう全話大好きなので甲乙つけがたいですね。ヒゲの話とか最高でした。

        あと大黒メンバーの中学でのクラスやクラブとあったのでちょっと考えてみました。
        黒客や探偵局の活動を考えるとまとまってる方がやりやすいかなとも思ったのですがあえてバラけた場合のを考えてみます。
        まずクラス分けが大体1クラスずつフミエとガチャ、ヤサコとハラケン、ダイチとデンパ、ナメッチとアイコで。
        あまり深い意味はありませんが、ダイチとフミエを離してヤサコとハラケンを同じクラスにしてみたかったのでこんな感じになりました。
        フミエとか一番知ってる奴ってことでガチャギリと話してたら付き合ってると勘違いされてダイチがそれを聞いてガチャに詰め寄ったり、とりあえず噂を消そうとみんなで頑張ったり、なんとか消えてフミエがきれいにそのことを忘れたのにダイチがその後より意識してしまったり…、とかいうのを考えてたらえらく長くなってしまったのでまた今度にでも。
        | 雨響奏 | 2010/07/10 4:48 PM |

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