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    『大黒市黒客クラブ戦記』 episode 15

    2010.06.18 Friday 22:50
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       先日ですね、よくわかんないですけど、フミエと一緒に牛丼食べてる夢見ました。しかも牛肉の盛りが悪かったのか、フミエさん店員にいちゃもんつけてました。最近眠りが浅いのか、変な夢ばっかり見てる気がします。さすがにこの夢見た時は起きたら笑ってしまいましたけどね。

       そんな話はどうでもよくて、この『黒客戦記』も残すところあとわずかになりました。とりあえず前回の話は引っぱり過ぎだったと反省しましてですね、今回は前後編の2回で決着をつけます。ライバル対決、いよいよ幕開けです。


       episode 15 「永遠の好敵手 -前編-」


       『黒客』が『黒客包囲網』を打ち破って以来、大黒市の電脳戦争の世界は様相が一変した。電脳戦争界をコントロールしていた大黒屋カルテル。「大黒市賢人会議」を開いては、電脳戦争界のあるべき未来を紡ぎだしていた彼らの正体は、ダイチ達もよく利用する通販電脳駄菓子屋の共同体だった。自分たちの利益を確保するために、彼らは大黒市の電脳戦争を絶やさないように画策していたのだ。そのためには、ある1クラブが勝ち続けるのを防がなくてはならない。『黒客』が彼らに狙われたのはそのためだった。

       ところが『黒客』は、絶体絶命の窮地に陥りながらもその包囲網を奇跡的に打ち破った。そこにはメガシ屋という、大黒屋カルテルに属さない特殊な立ち位置にある電脳グッズ屋の存在も大きかった。『黒客』側の勝利の要因はそこにあったと言ってもいい。
       その戦いにおいて大黒屋カルテルは、『黒客』を倒すために、それぞれ大金を投じて『黒客包囲網』の武装を強化した。もちろん彼らにとっては、『黒客』の勝利など考えられないことだった。この戦いにおいて、資金面で底をついた大黒屋カルテルは崩壊した。
       続いて起こったのは、各通販電脳駄菓子屋における激しい値下げ競争だった。カルテルとは、複数の企業が商品の価格や生産量を取り決めることで、独占禁止法においてその行為は禁止されている。しかし元々違法なウラビジネスである電脳グッズの販売において、その禁止法は抑止力にはなっていなかった。大黒屋カルテルに属する3社は、それぞれの利益を相互に守るため、価格設定や販売数を細かく取り決めていた。そのカルテルが崩壊すると、今度は各駄菓子屋が自由競争を始めたのだ。
       そのおかげで価格はそれまでの相場の半分近くまで下がり、メタバグの買い取り価格は逆にはね上がった。カルテルという形をとってきた頃は、価格も少し高めに設定しても商品は売れた。なにせ大黒市で電脳グッズを売っているのは、この通販電脳駄菓子屋を除けばメガシ屋ぐらいのものだったのだ。
       そしてその結果、大量の武器装備が市の電脳クラブに行き渡るという現象が起こった。さきの戦いで大黒市でも強豪だった『ウイングス』などのクラブは崩壊したものの、大黒市にはまだまだ数多の電脳クラブが存在する。その意味では、今が最も大黒市で戦火が拡大していると言ってもよかった。
       そしてもう1つの変化は、弱者は淘汰され、真の強豪クラブだけが生き残るという、弱肉強食の世界が出来上がったことだ。これまでの戦争では大黒屋カルテルの介入により、どうしても絶対的に強いクラブは登場できなかった。少し力を持ったところですぐに叩かれていたからだ。
       その大黒屋カルテルの支配が終焉した今となっては、誰も力を持ちすぎることを制止する者はいない。ひたすらに強い者だけが勝ち続ける。本来の自然の姿に戻ったと言ってもいい。大黒市は、真の争乱状態に突入したのだ。
       そんな市内の戦火拡大に歯止めをかけた出来事もあった。空間管理室によるサーチマトンの導入である。
       とにかく古い空間の消滅するところを知らない大黒市において、最終兵器として登場したのがサーチマトンだ。どんな小さなバグにも反応し、違法なソフトウェアを持つメガネも容赦なく攻撃する。電脳戦争の中では、いかにサーチマトンから逃げながら戦うかというのが戦術の肝になった。そして神社や学校にはサーチマトンは入れないという法則を誰かが発見した。今度はそれを逆手に取り、神社や学校にトラップを仕掛けるという戦術も生まれた。サーチマトンの登場も、大黒市における電脳戦争の形を変えた要因の1つだった。
       
       その流れの中で『黒客』は何をしていたか。包囲網の攻撃で壊滅寸前まで行った彼らだったが、その時に得た戦利品でなんとか解散には至らずに済んだ。そしてもう1度資金を貯めなければいけないということになった。その資金調達の手段は、やはり戦争だった。
       包囲網の攻撃の直前に直属部隊を組織した『黒客』だったが、自分たちのために仲間のメガネが無下に破壊されていくのに耐えきれなかったダイチが、すぐに部隊の解散を命じている。『黒客』の戦闘員は再び3人ということでリスタートした。
       今の『黒客』にとってみれば、ほぼ同数の電脳戦争などは目をつむっても勝てるほどに造作もないことだったのだ。相手にも特別な強豪などはなく、『黒客』は順調に力を蓄えられた。そして次第に、大黒市における敵も数少なくなっていた。残っているのは本当に力のあるクラブだったが、それでも『黒客』に及ぶクラブは出現しなかった。
       かつてダイチが夢見たのは、大黒市で頂点を極めること。その夢はすぐ目の前まで迫っている。しかし、この頃のダイチは腑抜けた感情に支配されていた。包囲網に襲撃されて以降、本当に歯ごたえのある敵はいなくなった。このままの勢いで頂点を極めても、ほとんど達成感など見いだせない。あそこで強豪をクラブをまとめて潰すんじゃなかったという後悔まで押し寄せていた。これが想像するだけで震えるくらい興奮した夢なのなのだろうか。まだ『TSUJIGIRI』とのバカみたいな真剣勝負だったり、まだ駆け出しのクラブだけで同盟して、強豪クラブの連合を倒した南北戦争であったり、『黒客』の終焉を覚悟したさきの『黒客包囲網』との戦いの方が楽しかったと思えた。本当のスリルを味わえた。スリルのない世界ほど味気のないものはない。
      「そう言うなって。大黒市をオレたちが制覇すれば、大黒のキングになれるんだぞ。オレたちが道を歩けば、通行人はこうべを垂れてひれ伏すだろう。そうすればメタバグの上納とかも思いのままだ」
      そう言って金に執着できるガチャギリがうらやましいとダイチは思った。正直、ダイチは大黒を制覇したら何をしようか考えていなかった。どうせ、また学校でいたずらを仕掛けるくらいしかやることがないなと思っていた。
      「あーあ。どっか目の覚めるくらいバカみたいに強いクラブは現れねえかなあ」
      大きくため息をつくようにダイチが言った。
      「けど、大黒でまだ戦争してるクラブって本当に少なくなったっしょ。ダイチの望むクラブなんてあるはずが」
      「いや。1つだけあるぞ」
      ナメッチの言葉を遮るようにガチャギリが言った。
      「お、どこだどこだ?」
      ダイチがうれしそうに反応する。
      「ほら。オレたちのホームページにも宣戦布告がきてる」
      ガチャギリがウインドウをダイチに示しながら言った。
      「なになに?勝負を所望する。場所は明後日、大黒新駅ビル。『ドリームチェイサー』」
      「聞いたことないクラブっスね」
      ナメッチがガチャギリを見た。
      「ああ。新興クラブらしい。構成メンバーは、大黒第一、第二、第三小の生徒だそうだ」
      「第三小?おいおい、ウチの学校にもメンバーがいるのかよ」
      誰だろうかとダイチは思った。同学年で電脳クラブを組んでいる人間など聞いたこともなかった。
      「噂によるとえげつないくらい強いらしいぜ。戦ったクラブが、PTSDを患ったっていうほどだ」
      PTSD?ってなんだ?」
      「簡単に言うと、戦争になどによって生じるトラウマだな」
      「ふぇ?じゃあ、その『ドリームチェイサー』ってとこと戦ったクラブは、トラウマになるほどひどい目に遭ったってことッスか?」
      ナメッチが体を震わせて言う。死ぬほどいたぶられるのだろうかとナメッチは思った。
      「実際のところはわからん。ただ、恐ろしいほど強いクラブってことだけは聞いている。正直、これをお前に見せるのもどうかと思った。この宣戦布告に乗っかるってことは、相手の懐に入り込むようなものだからな」
      「んなこと関係ねえ。おもしれえじゃねえか!やっと歯ごたえのあるクラブが現れたんだ!オレの血が騒ぐぜ!」
      ダイチは鼻息荒く立ち上がった。まるで水を得た魚のようだった。
      「まあ、こうなるだろうと思ったぜ。じゃあ、この『夢の追跡者』とやらを倒して、オレたちが大黒市を制覇してやるか!」
      ガチャギリも乗っかった。この戦いの先に、大黒市の王座が待っている。ガチャギリの目には底なしの大金が踊っていた。そしてナメッチはいつものパターンで、2人に引っ張られるように参戦することになった。
       
       風薫る5月ももうすぐ終わろうとしている、ある日の夕方。『黒客』メンバーはサイトに書き込まれた宣戦布告を受け、呼び出し場所である工事中の大黒新駅ビル前にやってきた。
      「この前メガばあへの借金の残りをまとめて支払ったこともあって、今回はあまり上等な武器が仕入れられなかった。日を改めてもらった方が良かったんじゃないか?」
      念を押すようにガチャギリが言う。『ドリームチェイサー』とぶつかり合うにしても、ガチャギリとしてはもう少し準備をしたかったというのが本音だった。
      「うるせえな。受けちまったもんはしょうがねえだろ。今更、来週にしてくれとか頼めるかっての」
      ダイチはそれでもやる気まんまんだった。一刻も早く最強クラブと呼ばれるその相手とやり合いたいと思っていた。
      「オヤビン。ここって、2学期からオレっちらの新校舎になるビルっスよね?」
      ナメッチが工事途中のビルを見上げながら言う。夕空に向かって伸びるその建物が、とても学校になるとは想像できなかった。
      「ああ。そういやそうだったな。それに今日は工事が休みみたいだな」
      「相手もそこを狙って今日を選んだんだろう。しかし建設中のビルの中か。正直、良い地形ではないな。この中に追い込まれると、逃げ場がなくなる」
      ガチャギリが不安そうに言った。
      「なに、これだけ高いビルで、まだ中も基礎構造だけだろ。逃げ場なんていくらでもあるって」
      「ふふん。案外アンタ達に逃げ場なんてないかもね。どこに隠れようと、どこまで逃げようと、アンタ達には破滅しか待っていない」
      「おお、そうか。なるほど。オレたちには破滅しか待ってないのか……ってフミエ!?」
      あまりに違和感のない掛け合いだったので、ダイチは気付くのが一瞬遅れた。ガチャギリやナメッチも後ろを振り返る。すると3人の背後にはフミエが1人で仁王立ちしていた。
      「お前、ここで何してんだ?」
      ガチャギリがいぶかしげに訊ねる。
      「うーん、そうね。しいて言えば、アンタ達の最後のマヌケ面見に来た」
      「はあ?さっきから何だお前?オレたちには破滅しか待っていないとか、最後のマヌケ面見に来たとか」
      ダイチ達があまりにも鈍いのでフミエはため息をついた。
      「まったく。アンタ達まだわからないの?今日ここにアンタ達を呼び出したのは私。そして今日、アンタ達を潰すのも私」
      「何だと!じゃあお前、『ドリームチェイサー』のメンバーの1人なのか!?」
      「まっ、そういうことね」
      ダイチは自然とフミエから23歩後ずさった。フミエにはまだ攻撃の意志が見られなかったが。
      1人か?」
      ガチャギリが周囲を見回しながら訊ねる。
      「まさか。私達は3人組。見えないだろうけど、ちゃんと攻撃態勢に入ってるわよ」
      「なんだと!じゃあステルスか!」
      ダイチはそう言って自分のメガネを押し上げた。しかしメガネをはずしても、まわりにフミエの味方らしい人間は見当たらない。メガネをかけていては見えなくなるような技を使っているのではないかという、ダイチの予想は外れた。
      「誰もいないぞ。まさかコイツ、ハッタリかましてんのか?」
      「しかし、こいつ1人で最強クラブなんて呼ばれるのはおかしい。何かあるはずだ」
      ダイチとガチャギリが耳打ちし合う。フミエはそのやりとりを聞いて笑い始めた。
      「アハハハっ。私がハッタリをかましてるなんて、おめでたいことね。いいわ。私達『ドリームチェイサー』が最強と呼ばれるゆえんを見せてあげる。さあ、コイツらを撃つのよ!」
      「撃つのよって……まわりに誰もいないのに何言ってんだお前は……って、なんだ!?」
      ダイチがあきれ顔でつぶやいた途端、視界に無数の黄色い円盤が現れた。いきなりのことにダイチ達は硬直する。
      「なんだこの円盤は!?」
      「アンタ達を破滅に追いやる、切り札よ」
      目の前の円盤に視界を遮られて見えなくなったフミエが笑みを含んで言った。
      「はっ。そんなビジュアル演出だけでオレたちがビビるとでも思ったか!」
      ガチャギリはそう言って、かまわずフミエに対してハンドガンを向けた。
      「これがただのビジュアル効果だけじゃないのよね。それをわからせてあげる。やるのよ!」
      「うわっ!なんだ!?」
      フミエの号令とともに、黄色い円盤の中から弾丸の掃射が始まった。ダイチ達は足元を狙われ、ダンサーのようなステップを踏みながら避ける。
      「くそっ!こりゃ逃げるしかないな!こっちだ!」
      ガチャギリがダイチ達に声をかけてビルの中に入って行く。フミエはそれを見て再び不敵に笑った。
      「フフフっ。これでいいわ。計算通り。さあて、積年の恨みを晴らす時ね。ダイチ。これからじっくりと料理してやるわ。ショートカットからの攻撃は頼んだわよ」
      「いつも通りだろ。わかってるって」
      「あまりムリはするな。相手は大黒トップクラスの『黒客』だからな」
      フミエの指電話から、頼もしい相棒達の声が聞こえてくる。
      「ええ。油断はしてない。だけど、たまらなく楽しみであることは間違いない。この手で、あのバカどもを葬れるんだからね」
      フミエは夕陽に染まるビルをもう1度見上げて、深呼吸をする。高ぶる心を落ち着かせてから、ゆっくりと自らもビルの中へ踏み出して行った。
       
      「おいガチャ!なんだあれ!?」
      とにかくビルの階段を上へとのぼりながらダイチは先ほど見た黄色い円盤について訊ねた。
      「知らん!だが、噂で少し聞いたことがある技に似ているところがある」
      「ある技ってなんスか!?」
      とりあえず4階までのぼってきたダイチ達は、支柱の影に隠れて息を整えた。そしてフミエが来ないかどうか階段の方を見やりながら、ガチャギリが続きを話始める。
      「離れた空間と空間を電脳上でつなぐことができるっていう技だ。ほとんど都市伝説かと思っていた。実際にそんな技が使えれば最強だからな。敵の目の前に身を晒さなくても攻撃ができるなんて、電脳戦争の常識を根本から覆すことができる」
      「じゃあ、アイツらは常識を覆したってことか?フミエの仲間は、今もどこかでオレたちを狙っている……
      「相手の位置がわからないんじゃ勝ち目がないじゃないッスか!」
      ガチャギリの話が本当なら『黒客』側は打つ手がない。ダイチは知らない間にそんな大技を仕込んで来たフミエに対する悔しさで下唇を噛んだ。
      「そもそも、なんでアイツがそんな技を使えるんだ?それにどこで人を集めた?」
      「さあな。だが、アイツにはメガばあという後ろ盾がある。その技もメガばあルートで知ったんじゃないか?そしてメガシ屋に出入りしていた人間を仲間に引き入れたんだろう」
      「その通りよ!」
      ガチャギリの言葉に反応するかのように、いつの間にか階段入り口に立っていたフミエが返した。
      「ちっ、見つかっちまったか!」
      「逃げ隠れるのは苦手なようね。それにそのままじゃ、いつまで経っても私たちには勝てないわ」
      あざ笑うかのようにフミエが言う。
      「うっさい!お前の仲間はこの近くにいないんだろう!こんな戦術、卑怯の極みだぞ!」
      「ふふん。その低能は哀れむべきね。私たちの仲間は、じっとアンタ達を追っているわ。そんな事にも気付かないんてね」
      「なんだと!?」
      フミエに言われてダイチ達は周囲を見回す。しかし人の気配は感じられない。
      「メガばあが引き入れてくれた2人の仲間は、才能のかたまりだった。それまでは電脳戦争なんて経験したことがなかったけど、メガばあの訓練によって見違えるほどに成長した。アンタ達に気配を掴ませないことぐらい、2人にとっては容易いことよ。さあ、『黒客』をあぶり出して!」
      フミエが号令をかけると、再び黄色い円盤がダイチ達のそばで開いた。支柱の陰に隠れていたダイチ達も、これにはたまらず陰から飛び出す。その瞬間にフミエはダイチの元に走り寄り、帯びていた電脳刀を抜いて振り下ろした。
      「うわっ!お前それ、天叢雲剣じゃないか!どこまでも卑怯なマネを!」
      紙一重でフミエの攻撃をかわしたダイチが叫ぶ。
      「違うわ。これは天叢雲剣を参考に、私が使うために新しく合金した天叢雲剣改よ!飛び道具系の攻撃を排除し、斬れ味は前にもまして鋭くしてある。近接戦闘専用の仕様にしてあるわ!」
      「な、なるほど。さっきの円盤で敵をあぶり出してお前が直接手を下す。それがお前らの戦法か!」
      「ピンポーン。その通り。じゃあ冥土の土産にあの円盤についても教えてあげましょうか。あれはショートカットと呼ばれるホールよ。空間の設計ミスを利用して、空間と空間をつなぐことができるの」
      「空間の、設計ミス?」
      フミエの言葉を聞いてガチャギリが考え込んだ。
      「もっとも、私に言わせればアンタ達の脳みその方が設計ミスよ。さあ、どんどん行くわよ!」
      フミエがさらに斬り込んでくる。ショートカットからの攻撃もあり、ダイチ達は逃げるのがやっと、というところだった。
      「やべえぞ。やられるのも時間の問題か?」
      ダイチがガチャギリとナメッチと背中を合わせながら言った。
      「いや、まだいけるかもしれん」
      対してガチャギリからは楽観的な答えが返って来た。この状況で何を根拠にそんなことが言えるのかとダイチやナメッチは思った。
      「どういけるんだよ!?」
      「その前にこれだ」
      ガチャギリは電脳煙幕弾を足元に投げて視界を遮った。『黒客』の3人は視界を暗視モードに切り替えて視界を確保し、再び階段を目指した。
      「ふん。逃げられるとでも思ってるの?」
      フミエの言葉を尻目に、ダイチ達は階段をのぼって5階にたどり着く。
      「で、どうすれば勝機があるって?」
      改めてダイチはガチャギリに訊ねる。
      「ああ。リスクが伴う方法だが」
      ガチャギリがダイチとナメッチに作戦の概要を話す。その内容にはダイチも驚愕した。
      「お前、それ本気で言ってるのか?マジあり得ん。危険すぎる。電脳戦争の常識を逸脱してるぞ!」
      「相手はその常識を覆してるんだよ。これしか方法はない」
      ダイチはしばらく考え込む。すると4階からのフミエの足音が異常なくらい響いているのがわかった。「オヤビ〜ン」とナメッチが情けない声でダイチの袖を引っ張る。
      「仕方ねえ。その作戦に賭けてみよう」


      (後編に続く)

      『大黒市黒客クラブ戦記』 | comments(4) | trackbacks(0) | - | - |

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      2015.02.13 Friday 22:50
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        コメント

        こんにちは、此花です。
        ショートカット、アニメでは恐らくダイチの発明ですね。キンギョの話にもテクスチャをはぎ取る方法なんて出てきますが、ダイチはああいう空間のバグのようなものに精通してるようですね。

        さて小説版、今まで本筋に近接しつつも本格的な絡みのなかったマリリンマリーンがようやっとの登場となりそうですね。消去法だとマリリン=タラちゃんなんですが、雨響さんのおっしゃるとおり、しかしどうにも年が違うのが疑問です。あるいはこの2人にも驚愕の展開が待っているのでしょうか。

        川島さんのお題、小説版の好きなシーンについて、そうですね、最近でいったらやはり「お兄ちゃん。哀れなひと」が物語全体のパラダイムシフトとして印象的なんですが、これはシーンというより台詞が、ですね。
        私が気に入っているシーンは結構前のところで、夏祭りで「赤い柱」の立つ場面です。「赤い柱」は完全に小説オリジナルのガジェットで、宮村氏が物語を得意のフィールドに引き込んでいることがわかり、正直に言うと若干の違和感があるのですが、ともかく視覚的イメージとして明確な像を結びます。で、ご存知のとおりこれが結局ちんけな罠で、すぐそうとわかるんですが、そうすることで「赤い柱」に対して抱いた違和感は展開の(仕組まれた)浅さに回収されて収縮します。ところが、にも関わらず物語のより深い部分では、方法の如何によらず「赤い柱」が立ったという事実が1つのフラグになってストーリーを牽引する力が生まれている、この辺の巧みさはさすがの力量を感じます。
        まあそんな詮無きことをうだうだ考えなくても、宮村氏のふいと吹かせるジュブナイルの風が心をくすぐる、これは名場面の1つだと思います。というところで本日はこれにて。悲しいことにドイツ戦はまたも地上波中継なしなのでさっさと寝ます。
        | 此花耀文 | 2010/06/24 2:00 AM |
        どうも、川島です。

        まずは『黒客戦記』の方ですが、ショートカットの使いどころは正直迷いましたね。あれがどのくらいレベルの高い技なのかわからなかったわけですが、今回はもう最強技として使わせてもらいました。これアニメを見ていると、『黒客』側の発明のような気もしたんですが、あえてフミエの切り札としています。
        この物語におけるフミエは、常にダイチの後じんを拝しているという立ち位置でした。それはフミエのプライドが許さないことですし、フミエのレベルを引き上げているのは間違いなくダイチです。そういう意味で互いを高め合う存在がいかに大きいか、書いていてもそれは感じますね。この2人の将来はどうなるのか、追ってみたい気もしますね。

        さて此花さん、ネタ振りありがとうございました。小説版のキャラについて雨響さんもスペースいっぱいに書き込んでいただいて感謝です。お二方の読み取りや解釈の深さは僕など到底及ばないものだと感じましたし、こんなブログであーだこーだと語っていますが、僕の発言はとても薄っぺらいなと恥ずかしく思います。

        さてそんな僕の小説版の印象ですが、お二方も言っておられる通りキャラの人間らしい影の部分を余すところなく描いているところが大きな魅力だと思いますね。語り手の人物の打算、些細な心の揺れ、自己嫌悪、他人に見下されているという不快感などなど、正直であるからこそ読者の心の中にはその感情がストレートに響くのだと思います。でもこれが普通の小説ではある種当たり前の描き方ですよね。しかしこの小説はアニメという原作があって、その中で固められたキャラ像を壊しながらやっているのがすごいと思うわけです。
        ところが壊しているのにキャラの魅力はアニメよりも増しているんですよね。ハラケンなどはアニメとのギャップを楽しむキャラですし、ヤサコはアニメでは描ききれなかった影の部分が逆に魅力を引き立たせています。此花さんのおっしゃるイサコの成長に関する驚きも、アニメとのギャップによって生まれるものですよね。
        でも壊すだけじゃない。フミエなどはほぼアニメのまんまのキャラです。でもフミエは変わらなくて良かったなと思っているのは僕だけではないはずです。その辺のバランスですよね。読者が望むこのバランスを見事に体現できる宮村氏が、磯監督の電脳コイルの強烈なファンであるからこそ成せる業なんでしょうね。
        この小説は、極論すればアニメファンブックの究極系だと思います。アニメを見てなくてこの小説を読まれている人っているのかなと思うくらい、アニメなくしてこの小説の魅力は感じ得ないと思うんですよね。雨響さんもイサコが色んなキャラと絡んでいるのが嬉しいとおっしゃっていますように、アニメでほとんど他人と絡まなかったイサコのそんな姿は僕たちにとって魅力的です。本当に僕たちが見たいシーンや絡みが余すところなく入っているのが、小説版の1番の魅力だと言ってもいいと思います。
        僕がこの小説で好きなシーンは、コイル探偵局と黒客が結託して、夜の鹿屋野神社などで作戦会議をしているような日常風景なんですよね。アニメでもありませんでしたし、おそらく読者の日常でも枯渇しているようななんでもないやり取りだからこそ、給水所としてこのようなシーン、人間関係を求めるのかなと思います。

        さて、そんなところで次のネタ振りをしようと思うのですが、現時点の小説版で皆さんの最も印象に残った、大好きだというシーンを教えてください。
        | 川島奏 | 2010/06/20 12:51 PM |
        こんにちは、雨響です。
        川島様も此花様も私からすればもう尊敬し尽くしても足らないくらい尊敬しておりますので、呼び捨てなどそんな…!
        ということでやはりここは「さん」でいきたいと思います。いえ、それでも恐れ多いのですが。
        面白いこと、とても楽しみに待っています。

        大黒黒客クラブ戦記の方ではドリームチェイサーとしてフミエちゃんが出てきましたね。
        やはり彼女の電脳力を上げているのは公式小説にもありましたがダイチの存在なんですね。
        メガネでダイチがフミエにイタズラしてからお互いにお互いのスキルを上達させているような感じなのでしょうか。
        やはりこの戦いが終わっても、いつか大人になっても、この二人には文字通り永遠の好敵手でいてほしい気がします。

        さて、小説版コイルについて。私なんぞが語っても極めて軽いものになりそうですが、その辺はご了承下さい。
        小説版ヤサコはアニメとまた全然違った印象を受けますが私も好きですね。他の人物にも言えることなんですが、親や友達やイサコ、自分について嫌いだとかかっこいいだとか色々な感情が揺れ動き移りゆくところなど、とても人間らしいなぁと感じます。
        宮村さんの描く人物はみんなそうなんですよね、その人を取り巻く人間の行動、言動、あるいは環境に触れ細かく揺れ動く心情を繊細で直感的に描いていて、またそれでいて各々がその個性を煌めかせ、格好良かったりするからすごいです。
        イサコは本編よりも随分多くの人と関わっていますよね。根本的な設定の違いからもいえることですが、やはり小説のイサコの迎える結末もまた大きく異なってきそうで目が離せません。
        あとそういうのとは関係無しに、様々な人と話したりしているイサコを見れてとても嬉しかったりします。他の人に対するイサコの抱く印象が徐々に変わっていくのに、様々な繋がりを感じずにはいられません。
        またタラちゃんがマリリンマリーンじゃないかというのもよく見るのですが、ヤサコと同じ時間軸上にいて且つ年齢的にもやっぱり違うんじゃないかなと思うのですが、どうなんでしょう?
        そのマリリンマリーンもやっと本格的に関わってきそうで楽しみです。
        あと個人的に好きなのでガチャギリについても。アニメでは何か感づきつつも結構我関せずな様子でしたが、小説だと積極的に関わりにいってますよね。特にイサコと関わったことで彼女も彼も何か変わったのではないかと思います。
        長文すみません字数が足りませんでした。
        | 雨響奏 | 2010/06/19 10:52 PM |
        こんにちは、此花です。

        始まりましたね、フミエとの頂上決戦。そういえばこれまで使われていなかったショートカット、フミエの発明でしたか。フミエは実戦で力を発揮するタイプと思っていましたが、天叢雲といい、新しいアイテムの開発にも長けているんですね。黒客方には秘策があるようですが、「ドリームチェイサ―」にもまだまだ見えない手の内がありそうです。急展開も目が離せませんが、ダイチ、フミエとも力を出し切って実に朗らかですね。「永遠の好敵手」の名にふさわしい、名勝負が生まれそうです。

        さて、川島さんから自由な話題をとご提案頂いたので、ひとつ。とはいえ本編は大分前に終わっており、語り尽くしたの感もありますので、ここは今も続いている小説版について。
        小説版は特にヤサコの性格が本編と大分違いますので賛否両論あると思いますが、私は好きですね。正直全体を構想した上でストーリーを進めるというよりは、その場その場で作者、宮村氏の書きたいことがぶわっと出てきて、創作衝動に素直に従って書いているというイメージで、作品のプロポーションはやや難ありという気もしないではないですが、それを補って余りあるのがキャラクター、特にイサコの成長だと思います。本編では最後の最後まで触れられなかったこのモチーフですが、小説版では数多の事件をかいくぐってイサコはきちんと成長します。ただそうであれば、ある意味反成長、現実逃避の象徴であったイサコの願望そのものも次第に必然性を失うべきところを、最新刊では見事に逆転させている点が実に素晴らしいです。また、ハラケンを巡る展開も本編とは違う仕掛けがあり、どうやら当初からの構想と見ますが、この違いは今後の展開のキーとなる、やも知れません。それに、川島さんも書かれているとおり、ダイチを始めとした黒客の連中もそれぞれ一味違ったキャラが立っていますね。
        川島さんも過去に何回か書かれていますが、この小説版の印象について皆さんのご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。

        では、本日はこれにて。
        | 此花耀文 | 2010/06/19 1:32 AM |

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