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    川島の本棚 第13回 『Another』

    2012.05.06 Sunday 22:16
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        皆さん、連休はどう過ごされましたか。5月病に罹らないように、明日からも頑張りましょう。

       今回ご紹介する本は、前回の"マイブック4月"でも取り上げた、綾辻行人氏の『Another』(上・下)です。















             綾辻行人 『Another』角川文庫

       今年の1月からアニメ化されていたので、おそらくそれで知っている方も多いかと思います。僕は現時点でアニメは見ていないので、こちらの原作に沿ってご紹介していきます。

       まずは作者の綾辻氏について。これまでこのブログでは若手作家を中心に取り上げてきましたが(というより、僕が若手作家ばかり読んでいたからですが)、この方は皆さんも御存知の通り、日本のミステリー界では大御所というべき存在です。

       文学史上においては、80年代終盤からミステリー界で「新本格」ムーヴメントを巻き起こした功績が評価されています。が、自分はそのあたりの歴史の流れに関しては疎いので、またそのあたりは勉強してご紹介することにします。

       簡単にまとめれば、このブログで取り上げているような現代の若手ミステリー作家に多大なる影響を与えた作家さんということです。特に氏のデビュー作である『十角館の殺人』(1987年)は、当時の読者にとてつもない衝撃をもたらしたといいます。

       自分もその『十角館の殺人』は読みました。確かに予想だにできない真相が用意されていたものの、悲しいかな、僕は氏の得意とする文章トリック(一般的に叙述トリックというやつですが)に対して、これまで道尾秀介氏や長沢樹氏の作品で免疫が出来上がっていたので、そこまで大きな衝撃は受けなかったというのが本当のところです。

       もちろん、僕が同時代にこの作品に出会っていれば、その当時の読者と同じような反応になっていたはずです。何事も時代を先駆けることこそに価値があるという意味では、この『十角館の殺人』の価値が下がることはありませんし、一読の価値はあると思います。

       さて、本題の『Another』に話を移しましょう。単行本の刊行が2009年で、文庫化されたのが2011年なので、氏の中では新しい作品ということになります。

       それではまずは上下巻あるうちの上巻のあらすじから。

       夜見山北(よみやまきた)中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた!

       全体的なイメージとして何となく想起するのが、恩田陸氏の『六番目の小夜子』でしょう。転校生こそ主人公である恒一少年ですが、クラスに不思議な存在感を放つ美少女がいて、その彼女を巡ってクラスで不思議なことが起こってーー実際、文庫本の著者のあとがきには『六番目の小夜子』のイメージがあったと書かれています。

       ただ、雰囲気はかなり違います。『小夜子』はみずみずしい学園生活の中に内包される闇が描かれていたのに対して、この作品では学園生活が非常に重々しく描かれています。

       それもそのはずで、恒一が転校したクラスは、毎月クラスの関係者が死んでいく、ある種の呪い(作中では現象と呼ばれています)がかかっていたのです。そしてあらすじにもあるように、容赦なく人が死んでいきます。多少の残酷描写もあり。

       そんな信じられないような学園生活の中で、恒一は左目に眼帯をつけた美少女ミサキ・メイの存在に惹き付けられていきます。ところが、クラスの他の生徒、そして教師陣でさえも、彼女がこの世に存在しないもののように振る舞っているのです。恒一には反応を示してくれる彼女。彼女の行動には無反応の周囲。

       他の人間には彼女が見えていないのか? 彼女の声が聞こえていないのか? クラスにかけられた呪いに彼女は関係しているのか?

       彼女は存在しているのか?

       このように、ジャンルとしては"ホラー+ミステリー"という風に云うことができると思います。

       特にミステリー要素として、物語を牽引する"謎"。これが物語が進むたびに次々に変わっていくところが、この作品の面白いところです。上巻の最も大きな"謎"というのが、上述の「彼女は存在しているのか?」というところになります。

       1つの謎が解けると、また次の謎が浮かび上がる構造は、読者を飽きさせず一気に結末まで読ませるだけの引力があります。一方で、肝がホラーということもあり、すべての事件の真相が明快に解決するというものでもありません。

       この作品ではあくまで、実体の見えない"呪い"に対してどう抵抗するのか、どのように人が死んでいくのを食い止めるのか、が焦点になってきます。実際には犯人がいて、すべての事件が人の手によるものだった、という真相などではないことは、ここで明言しても差し支えないと思います。

       ですが、最後の最後に明かされる真実には驚かされること請け合いです。途中で張り巡らされている伏線の仕込みが巧妙で、また回収も見事でした。読者を引きつけてやまない物語の展開といい、さすが大御所というところでしょうか。この作品はかなり自信を持ってオススメできます。

       ところで、上述したようにこの作品はアニメ化がされており、夏には実写で映画化も予定されているのですが、原作は忠実に再現できないだろうなとは思います。氏の文章トリックは小説だからこそ効力を発揮するものなので、映像化ではかなりそこは変えられるのではなないでしょうか。逆に、そこがどんな風に変わるのかは、見所の1つかもしれません。

       そこはまた、楽しみにすることとします。





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