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    川島の本棚 第11回『消失グラデーション』

    2012.03.04 Sunday 21:58
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        お久しぶりです。川島です。約1ヶ月ぶりの投稿です。

       最近は色々立て込んでいまして、こちらのブログに手がつかない状態でした。小説の連載もしていないのにこちらのブログも途絶えれば、いよいよ失踪を疑った方もいらしたかもしれませんが、何の前触れもなくいなくなることはありませんのでご安心を。

       ただ、そういう状況なので再三予告している次回作の執筆も止まっている状態です。申し訳ありませんが、こちらは本当に気長に待っていただくしかありません。

       文章を書くということすら久しぶりというところなので、リハビリを兼ねて今回は川島の本棚の第11回をお送りします。

       今回紹介するのは、長沢樹さんの『消失グラデーション』です。


























          長沢樹 『消失グラデーション』 角川書店

       このコーナーでは基本的に文庫本を中心に紹介しておりますが、今作はハードカバーになります。ご紹介するのに文庫化を待つ時間が惜しいという傑作です。まずは簡単にあらすじから。

       とある高校の男子バスケ部員椎名康は、女子バスケ部員の少女が、校舎の屋上から転落した場面に出くわす。しかし、転落したはずの彼女の姿が突然目の前から消えた!? 自殺か? 他殺か? そして彼女はどこに消えたのか?

       この長沢樹さんは、今作でデビューした新人作家さんです。調べてみたところ映像制作会社に勤務する40代の方で、これは少々意外でした。

       というのも、内容はまごうことなき青春小説だからです。作風から20代ぐらいの新鋭作家が書いたものなのかなと思っていたので、今回調べてみて驚いています。

       さて。これはミステリーというよりも人間ドラマとして読み応えのある小説です、と言えば著者に失礼かもしれませんが、僕としてはそちらを強く押したいと思います。

       前回の記事で、ミステリーを目的とする小説か手段とする小説のどちらが好きか、というお話をしましたが、この小説は後者にあたると思います。ただし、ミステリーの部分の作りが疎かになっているわけではありません。作中で起こる事件についてはしっかりとしたロジックで推理が展開され、物語の中盤にかけて読者は主人公達と一緒に真相を探っていくことになります。

       しかし、この小説の特徴的なところは、事件が起こる前から物語に引き込まれるところです。舞台はとある高校の男女バスケ部。特に女子バスケット部の内部の内紛が物語の軸になってきます。

       都内屈指の強豪である女子バスケ部。その絶対的エースで、モデルとしても芸能界を賑わしていた網川緑は、しかしチームのことを考えないワンマンプレーに終始していた。それを快く思わないチームメイトからバッシングを受ける緑。そんな彼女を好いていた主人公の椎名康はある日、校舎のトイレでリストカットを試みていた彼女を見つける......

       というところが、事件が起こる前の展開です。見ての通り、青春小説とはいっても非常に重たい内容です。しかし、このリストカットという行為は、それを試そうとも思ったことのない人間からは想像できないような意味を持っています。これも物語の重要な鍵になってきます。

       まさに若者の葛藤というところで、彼女達女子バスケ部員の思いがぶつかり合うところなどはまさに"若さ"を感じました。青春小説の読み応えのあるところは、登場人物達が自分の気持ちを本気でぶつけ合う"幼さ"にあると僕は思っています。下手に大人になると、自分の気持ちをぐっと我慢する必要もあるでしょう。そういう制約のない若さに、だんだん羨ましさを感じるようになってきたんですよね。

       というのは僕の個人的な感傷。話を戻すと、この小説の重要なウェイトを占めるのは、その女子バスケット部の内紛の真相です。後に起こる転落事故の真実にも密接に絡んできます。

       また、椎名康という主人公もなかなか見所のある人物です。この小説は、康が放課後に校舎の誰も来ないようなところに女の子を連れて来ていやらしいことをする、という場面から始まります。そういう一面を隠そうとしていないところがあり、物語の主人公としては特異なキャラだと思います。濃くはないですが、こうしたエロティックな描写も見所の1つかと。

       この小説の見所はそれだけに終わりません。終盤に待っている大どんでん返しに、誰もが面食らうことになるでしょう。ここは多くを説明しません。読んで体感してください。著者の物語構築の腕には、ただただ感嘆するしかありません。

       あらゆる点において僕好み、というところでは川島の本棚で紹介した本の中では現時点でNo.1に輝く作品です。僕としては「こんな物語が読みたかった」という感想ですね。ぜひ皆さんにも体感してほしい作品です。読んで後悔はしない小説だと思います。


       
       

       



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