奏作空間

Reading & Creation Space "SOH"

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    『電脳コイル』 二次創作短編  ー最後のクリスマスー

    2011.12.25 Sunday 15:43
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        2028年のクリスマスイヴ。この日、大黒市は強烈な寒波に見舞われていた。
       時刻は午後4時。灰色の空からは時折小さな雨粒が落ちてくる中、カーキ色のモッズコートを羽織った文恵は早足で大黒駅へと向かっていた。天気予報によると大黒市では久しぶりのホワイトクリスマスになる可能性が高いらしく、それだけで文恵は自分達が特別であることを噛み締めずにはいられなかった。
       ......初めて一緒に迎えるクリスマスを雪が彩ってくれれば、これはきっと、一生の思い出になる。そんな小さな奇跡をくれた神様に、そして、1年告白を我慢してくれた大地に感謝だ。
       大地が文恵に交際を申し込んだのは今年の5月。しかし、去年の春の時点で大地は文恵にその想いを告げていた。その時の文恵はこれまでライバル関係にあった大地といきなり恋仲になることが想像できなくて、返答を保留したのだ。
       代わりに大地は、自分がサッカー部でレギュラーを取ったらその返事をもう1度聞いていいかと訊ね、文恵はその条件を飲んだ。
       文恵も決して大地に悪い印象を抱いていたわけではない。それまでは大地を異性として意識することが恥ずかしくて、その気持ちに見てみぬフリをしていたというのが実際のところだ。だからあの告白を境に、文恵の方も大地への意識が日に日に高まっていった。
       大地の方はというと、部活以外の時間もトレーニングに励んでいたという話で、しかしそれを決して文恵に見せようとはしなかった。結局その様子を気にした文恵が周りに訊ね回ったわけだが、それが文恵の心に響かないわけがなかった。
       ......何なのよ。アンタがそんな根性のあるヤツだなんて知らなかったわよ。小学校以来のおバカキャラまで封印しちゃって、今のアンタどう冷静に見てもカッコいいから!!
       その猛練習と関係あるかどうかはわからないが、大地はみるみるうちに身長が伸びて、1年の3学期の頃には文恵より頭1つ分抜き出ていた。「アンタ達、入学式の時に1年でどっちがどれだけ背が伸びるか張り合ってたけど、この時点で大地のコールド勝ちよね」とは愛子の言葉だ。ちなみにその賭けの文恵側の罰ゲームは、1ヶ月大地と並んで登下校するというものだった......もはやそれが文恵にとって罰ゲームにならなかったのは言うまでもない。
       さらに大地は非凡なサッカーセンスを持ち合わせていたらしく、体力面だけでなく技術面も1年で著しく向上した。結果、2年生の5月にはレギュラーだった同学年の小学校サッカー経験者を押しのけ、ボランチとしてのレギュラーを勝ち取った。
       晴れて公約を果たした大地は文恵に再告白し、文恵も喜んでそれを受けた。文恵としてもその時を待ち望んでいたのだ。
       今となっては絶対に自分の方が好きだと文恵は思っている。大地のサッカー部での努力は色々な人から評価されていたし、大地が文恵に告白したことでため息をついた女子も少なくなかったという。どれだけ冷やかされようと開き直れるほどに、大地と付き合っていることは文恵にとって誇りになっていた。
       そんな文恵も大地の努力に負けないように2年に進級してから生徒会に入り、学祭などのイベント運営に奔走した。上級生の引退でサッカー部主将に任命された大地ともども、いつしか学校の中心人物として見られるようになった2人。その交際は全校中に知られることとなり、ほとんど羨望の眼差しで見られるようになった。
       こんな幸せでいいんだろうか? 後で良くないことが起こるんじゃないだろうか? と不安になるほど充実した日々。そうして訪れた、街全体が世のカップルに祝福ムードを提供する12月。文恵のテンションは歯止めの利かないのぼり調子で、この24日、ピークを迎えていた。
       寒波? 気のせい気のせい。このコートが暑いくらいだもん。
       文恵は頬を上気させながら、大地の待っていた大黒駅に到着した。
      「ういーす。大丈夫かお前? 顔赤いけど、熱でもあるんじゃねえのか?」
       黒いダウンジャケットを羽織った大地は、会うなり文恵の額に手を当てた。
      「熱があったとしたら、それ多分大地のせいだから」
      「......恥ずかしいけど今のお前、最高にかわいかった」
       他人から見ればどこのバカップルか、と思われるような会話かもしれないが、気にしたら負けだと思っている。
      「みんな集まったらこんなこと言えないからね。今のうち」
      「そうだな。で、どこにプレゼント買いに行く? っていうか何買う?」
       と、訊ねた大地が決して無粋なわけではない。中学生である文恵と大地は、誕生日プレゼントこそ小さなもの(今年なら文恵は大地が練習で使うソックス、大地は文恵が読みたがっていたシリーズ小説の文庫本セット)を送り合ったが、クリスマスはプレゼント交換はなしにしようと決めていた。もちろん財政的な理由からだ。
       これから2人で買いに行くのは、今夜愛子の家で開かれるクリスマスパーティーの交換用プレゼントだ。
      「何でもいいんだろうけどね。弁天モールに小ネタ的な商品扱った雑貨屋があるから、そこで適当に探そうと思って」
      「ああ、あそこか」
       大黒駅から2つ隣の駅だ。行き帰りしても6時半に始まるパーティーには十分に間に合う。
       2人は改札を抜け、ホームに並んで電車が来るのを待った。
       丸めた両手に息を吹きかけてコートのポケットに引っ込める文恵。それに気付いているのかいないのか、ジャケットのポケットに入れた手を落ち着きなく揺らしている大地。袖と袖が触れ合いながらも、まだそれが当たり前の距離感。
       文恵の頭の中は、今日という日をきっかけにしたいという思いでいっぱいだった。
       そして何か話題を探していたという風な大地がふとつぶやいた。
      「しっかし、愛子も寂しがりだよなあ」
      「それは言わないであげて」
       愛子がその提案したのは12月の上旬。はじめは文恵も耳を疑ったが、それには彼女なりの考えがあったようである。
       愛子はつい先月に付き合っていた男子(それも学年1つ上の先輩)と別れてしまったので、クリスマスに何の楽しみもなくなったというのだ。それが大きな理由の1つだが、この提案をしたのは目下交際中の文恵・大地、そして優子・研一カップルのためでもあるらしい。曰く、
      「クリスマスとは言っても、中学生のカップルが夜に2人で会うなんて親が認めないでしょ。でも、みんなが来るパーティーならそのハードルは下がるじゃない。適当な時間に締めるし、なんならカップル達は先に抜けてもいいわ。終わりの時間さえ親に告げておけば、それまでの時間は街にでも繰り出して、クリスマスの雰囲気を十分味わえるってもんよ」
       と、いうことである。
       文恵には結構な冒険に思えたが、確かにそれは愛子の言う通りだった。お互いの親も一応交際のことは知っているが、夜の外出を認めるとは思えない。しかし、街でクリスマスの気分を味わいながら大地と2人寄り添うというのはやはり魅力的だった。
       というのも、ちょうどこの時期、大黒駅前には巨大なツリーが飾られ、クリスマス期間は"電脳メガネ"を利用したイルミネーションが点灯するのだ。しかも今年は特別で、来年に新型ウェアラブルコンピューターの発売が決まっているという関係から、これが"メガネ"最後のクリスマスイベントということで大掛かりな演出になるのだという。文恵達"メガネ"使いだった人にとっては必見のイベントなのだ。
       そういう事情もあって、文恵や優子もその冒険をする決意をした。大地と研一も引っ張られる形でそれを認め、パーティーには彼女のいない男性陣にもお声がかかることとなった。
      「結構来るよなあ。俺ら2人にハラヤサ、明を除く元黒客メンバーと主催者愛子で8人かよ。アイツの家ってそんなにでかいのか? マンションだろ?」
      「いや、ヤサコと一回行ったことあるけど、広いわよ、あのマンション。っていうか高いわよきっと」
      「値段がか? ふ〜ん、愛子の家って金持ちなんだな」
      「そうみたいね。羨ましい限りで」
      「それでも8人でパーティー開くなんて、よく親が認めたな」
      「愛子のお母さんよ。ノリが愛子と同じだから、パーティーとか好きらしいわ」
      「マジか。まあそうだろうなあ。会費1000円で参加者分の食事が用意されるってよっぽどだ気合い入ってるよな」
      「色々とありがたいよね。いくら愛子の寂しさ紛らわすのが主眼とはいえ、あたし達のことも考えてくれてるんだし」
       文恵にとってのメインイベントはパーティーではなくイルミネーションだ。もちろんその機会をくれた愛子の機転にも感謝している。
       その特別な夜の仕上げの演出を願うように、文恵は曇り空をじっと振り仰いだ。

       交換用プレゼントを確保し、2人が愛子のマンションに到着したのは約束の時間の15分前だった。
      「いらっしゃーい。おっ、沢口夫妻一番乗りね」
       ふ、ふさい!?
      「しれっと名字を合わせるなよ」
      「いずれそうなるんでしょーが」
       愛子があまりに当たり前のような口調で言うので、文恵と大地は困惑したように目を見合わせた。
      「......そうなったら幸せだが冗談としての処理の仕方に困るからやめてくれ」
       と、大地が生真面目に返したので、文恵の体温はそこで沸点に達した。
      「あーもう見ちゃおれん。やっぱリア充抜きで開くんだったわ。でもまあ来たからにはそれなりの仕打ちには耐えてもらわないとね〜。どうぞ」
       不敵に笑いながら愛子は2人を中に招いた。
       靴を脱ぎ、廊下を渡った先にある扉を開くと、広いリビングはパーティームード一色に染められていた。装飾の施されたクリスマスツリーに、暖色の蛍光灯、天井にはモールが渡してあって、クロスのかけられた大テーブルには様々な種類の料理が並べられている。
      「うっわー。すごい本格的」
       文恵も思わず感想が漏れた。
      「やるからには本気出すのが我が家の主義だしね。あ、お母さん。文恵と大地よ」
      「いらっしゃーい」
       料理を運んでいた愛子の母に声をかけられ、2人はかしこまって会釈した。
      「文恵ちゃん久しぶり。しばらく見ないうちに大人っぽくなったわね。やっぱり恋をすると女の子はキレイになるのねえ」
      「そ、そんな!」
       返す言葉に困り文恵は全力でかぶりを振る。
      「大地君も随分大きくなったわねえ」
      「あ、えっと、知ってたんですか俺のこと?」
      「当たり前よ! 小学校の時は愛ちゃんのクラスで一番目立ってたじゃない。あの悪ガキがこんな男っぽくなってたなんて驚きだわあ! うんうん。噂には聞いてたけど、2人とも本当にお似合いよ」
      「そ、そうですか?」
       ダメだ。遠慮のない物言いに大地も完全に押されてる。まさに愛子が2人いる感じだ。
      「まあまあお母さん。2人をいじるのは後の楽しみにしようよ」
      「そうね。2人の馴れ初めも後でじっくり聞かせてね」
       馴れ初めって、今日来るメンバーにとっては公然の事実なんですけど!! それをこの場でもう1度披露しないいけないとは。ぐう、お母さんが相手じゃ下手に断れないし......
       今更ながらに文恵は今日のパーティーの趣旨を理解した。愛子がそんなうまい話を持って来るわけがないのだ。イルミネーションに行けることで釣って呼び出し、この場でカップル2組を吊るし上げるのが彼女の目的だ。そうやって今日自分に相手がいないことに対して溜飲を下げるつもりなのだ。
      「上着はこっちで預かっとくわ。みんなが来るまで、あっちのソファーでいちゃついてなさい」
      「こんな人前でいちゃつくか!!」
       それでも他に腰を下ろすところがなかったので、ベランダのそばに置かれたソファー(しかもベランダ側に向けられているのは明らかにそこだけプライベート空間にしようとしている)に大地と文恵は腰を下ろした。
      「あー前途多難だわ」
       文恵がつぶやくと、
      「愛子のオバさんがああいう人だってこと教えといてくれよ。こっちにも心の準備させてくれ」
       大地もやはりダメージを受けていたようである。
      「ごめん。でもあんな軽いとは思わなかったのよ」
       そんな会話をしているとインターホンが鳴った。愛子がその応対に出て、こちらに合図を送る。
      「原川夫妻のご到着よ」
       そうなるとこのソファーはその2人に譲らないといけないなと思い、文恵と大地は立ち上がることにした。優子と研一は文恵と大地よりも1年以上付き合っている期間が長いという点では大先輩だ。
      「いらっしゃーい。あら優子ちゃん、おめかしして来たわねえ。とってもキレイよ」
      「ありがとうございます。今朝美容室に行ってきたところなんです」
       冷やかされる期間も優子は文恵よりも長いわけで、その受け答えも慣れたものである。
      「研一君もまた一段と落ち着いたというか、知的な雰囲気出てきたわね。優子ちゃんの要望?」
      「ああ、いえ。そういうわけでは」
       研一は勉強のし過ぎで視力が落ちたのか、最近ただのメガネをかけるようになった。黒い上縁のフレームで、まさに知的なオーラがありありと出ている。実際頭が良いので余計に印象が強い。
      「ハラケンってこういうとこでも打っても響かないよね」
      「もともとそういうキャラじゃねえか」
       そんなことを大地と言っていると、再びチャイムが鳴った。残る元黒客メンバー3人も到着したようである。
       彼らが入ってきたところで大地が声をかけた。
      「よう、まさか悟朗も来るとは思わなかったぞ」
       ガチャギリの愛称で親しまれた深川悟朗は、中1の時にそんなガキみたいなあだ名は卒業させてくれと申し出て、それ以来名前で呼ばれるようになった。
      「多少の社交性も身につけた方がいいっていう合理的な判断をしたまでだ」
      「アンタも大人になったわねえ」
       文恵が率直な感想を述べると、
      「お前らに言われたかねえわ」
       と、彼にもからかわれてしまった。
      「じゃあみんな揃ったことだし、はじめましょうか」
       主催者である愛子が仕切り、ジュースでの乾杯で立食形式のパーティーは幕を開けることとなった。

      「......そういや大地。新型ウェアラブルコンピューターの発表会見は見たか?」
       雑談の中でふと悟朗がその話題を持ち出した。
      「ああ。途中までな」
       メガマスを吸収する形で設立されたコイルスアプリコットテクノロジー社は、来年の春頃に発売されるという"メガネ"後継機の全容発表をクリスマスに合わせてきたのだ。それが今日の午後3時。国内先行発売ということが決定されているものの、世界中のメディアがその発表を注視していた。
      「やっぱり、大方の予想通り体内ナノマシンを使ったものだったな」
       IT情報や噂の収集は悟朗の趣味でもある。彼が予想通りと言ったように、ネット界隈では新型の目玉は体内ナノマシンで間違いないとされていた。
      「ハード形態はネックレス型になるんだってね」
       文恵が訊ねると、
      「へ〜。じゃあついにウェアラブルコンピューターにもファッション性が求められる時代になるのね」
       愛子が感心したようにつぶやいた。
      「ハードの形なんてむしろどうでもいいんだよ。一応、アクセサリーの類になるんじゃないかって予想は出てたが、それは体内ナノマシンを操作するためのものでしかねえし」
      「その新型のハードには、改良された量子回路が搭載されるみたいだね。ついにコイルス社の開発した量子回路の原理が解き明かされて、高速通信だけに特化した量子回路が完成したんだ。量子回路と精神の直結がこれで起こりえなくなったっていうのは、"メガネ"とは大きな違いだよ」
       悟朗と研一の理系コンビはさすがに詳しい。そこに大地も続けた。
      「精神医療もイマーゴとは別に、ナノマシンを使ったまったく新しい方法を確立されるっていう話だな。そもそも今度の新型にはディスプレイがないってことだろ。ナノマシンが脳内に電脳情報を直接書き出すっていう原理も会見で聞いたが、すげー技術革新だよな」
      「まったくだよ。イマーゴと原理は違えど、誰もが脳と電脳空間を直結させることができるようになるってことだね」
       "メガネ"と比べてあらゆる側面で進化を遂げるような新型らしいが、しかし文恵には純粋な疑問が浮かんでいた。
      「でも怖くない? まず体内にコンピューター入れるのもなんか抵抗あるし、脳とネットワークが直結するって、自分の脳内他人に丸見えになるでしょ」
      「一番の課題は文恵の言う通りネットワークセキュリティだな。人の体内のナノマシンをハッキングできたら、それこそ何でもできそうだし」
      「もちろん、その点にも解決策があるからこそ、この早いタイミングで発売を決めたんだろうけど」
       メガマスが"メガネ"の不具合の隠蔽で散々叩かれて潰れた歴史があるだけに、後継企業にとってはしょっぱなからのつまづきは許されない。しかし"メガネ"の後継機の早い登場を世間が待っていたのも事実で、そういった事情が絡み合った末の来年春発売なのだ。
      「まあ、ほとんどの"メガネ"ユーザーが最初は及び腰になるはずだし、まずは新しい物好きのヘビーユーザーのレビューを待つのが妥当だろうな」
      「1年ぐらいは様子見した方がいいだろうね。不具合のあることがわかっている"メガネ"は三カ年計画ですべて回収したいって思惑があるみたいだし、乗り換えるなら再来年かその翌年ぐらいが目処だよ。新型のハードは"メガネ"との交換で無償で手に入るみたいだし」
       この後、悟朗と研一の間で重厚な電脳談義が始まったので、他のメンバー達はしれーっと会話からはけていった。
       
       それからは相原親子が中心になって文恵と大地を冷やかしたり、その合間にビンゴという古典的な方法でプレゼントを交換したりしながら(全員が持ち寄ったプレゼントをビンゴで上がった人から選んでいくという方式だったが、誰も実用的なものを買ってこなかったので景品の体を成していなかった)、あっという間に時間は過ぎていった。
       雪が降り始めたことにいち早く気付いたのは、ずっと外の様子を気にしていた文恵である。
      「見て見て。ほら、雪よ雪!」
       ベランダの窓に大地を引っ張ってきて見せた。
      「降ってきたか。よかったな、願った通りになって」
      「え?」
       文恵は今夜雪にならないかなあ、と口に出した覚えはない。
      「お前、ずっと空模様気にしてたじゃねえか。あれはこうなることを祈ってたんだろ。俺も内心で祈ってたしな」
       うわ、ちょっと!! 今の優しい表情、反則的にグッときたんだけど!!
      「......ダメだわ。今ちょっと自制がかからなくなりそうだった」
       大地もそれにはリビングの真ん中で集まっている男子達を見て苦笑する。
      「ご両人。なんのためにこの愛のシートがあると思ってんの。ここで雪でも眺めながら、2人でいい雰囲気になりなさいよ」
       またこんな時に愛子が現れて文恵は焦った。
      「ムリムリムリ! みんなと同じ空間にいてそんな雰囲気になれない! もう恥ずかしいからここにいてよ! ヤサコもヤサコも!」
       しどろもどろになった文恵は、遠慮して距離を置いてくれていた優子も呼んだ。
      「文恵ちゃんも恥ずかしがらなくてもいいじゃない。みんな空気読んでくれると思うよ」
      「そうやって空気読まれてる雰囲気になるのがイヤなのよ!」
       結局窓際で4人雪を眺める形となった。
      「でもさあ、ハラケンの方はまだ悟朗と話し込んでるわよ。いいのあれで?」
       いささか不満そうに愛子が優子に訊ねた。
      「......いいの。スイッチが入るとああなるのはいつものことだしね。一緒にいたら文恵ちゃんと大地君みたいに冷やかされるだろうし」
      「うわ。ひっどいヤサコ。あたし達のこと隠れ蓑にしてくれちゃって」
      「わたし達は去年1年みんなから集中砲火の目に遭ったんだから、このくらいはいいじゃない」
       いたずらっぽく優子は笑ってみせた。文恵の目から見ても、優子は中学校入学の時と比べると少し大人びた感じがする。
      「......そう言えばさあ、イサコの方はどうなってんのかねえ。修一君とうまくやってるのかしら?」
       ふと愛子が遠い目をしてつぶやいた。
       勇子が去年の暮れあたりから優子のいとこである修一と付き合っているということは文恵も聞いていた。去年の春の事件で2人が大黒に来た時からなんとなく怪しい雰囲気だったので、これも納得の組み合わせだった。
      「金沢も雪かなあ?」
      「あそこはここより雪は降るだろ。イサコもシュウと一緒に見てんじゃねえか?」
       大地もその時に修一と友達になったので、2人がうまくいくことを願っているらしい。
       ところが、
      「そのことなんだけど、わたし、お父さんに聞いちゃったの......」
      「なに? ヤサコ」
       突然深刻な表情になった優子の顔をその場の3人は覗き込んだ。
      「修一君のお父さん、つまりわたしの叔父さんだけど、来年の春から大黒支社に転勤になるんだって。修一君も、大黒中への転校が決まったって」
      「え!?」
       3人の声が重なった。
      「それはもう決定事項?」
      「うん。修一君も聞かされてるはず」
       その場にはこの浮かれた日にはそぐわない重い沈黙がおりた。
      「......そうか。シュウが大黒中に来るのは歓迎したいけど、それはイサコも辛いな」
       言わずもがなのことを大地はつぶやく。
      「じゃあ、どうなんだろう。修一君はこのクリスマスの前にそのことイサコに言ったのかな。言ったらクリスマスに会うのもなんか辛いし、言ってなかったら言い出すタイミング逃すかもしれないしなあ。イサコに来年のクリスマスも一緒にいようね、なんて言われたらなおさら」
      「ちょっと!! なに悲しいストーリー作ってんの!? 聞いてる方も辛いじゃない!!」
       と、文恵は愛子を一喝した。
      「ご、ごめん。っていうか泣いてるの!? ちょっとアンタ、人の感情の受信感度高すぎるでしょ!」
      「仕方ないじゃない。好きな人といられなくなるのよ。そんな、イサコの気持ち考えたら......」
      「文恵」
       大地がそっと肩に手を置いた。少し気まずい雰囲気になり、「ちょっと、ここはアンタに任せるから」と彼に耳打ちした愛子は、優子と一緒にその場を離れていった。
       はからずも2人だけの空気ができあがってしまった。
      「泣くなよ、こんな日に」
       声に大地の困惑が混じっているのがわかる。もしかしたら、大地の前で泣いたのは初めてかもしれない。
      「だって......」
      「悲しいのはイサコの気持ちを思ったからか? それとも自分の身に置き換えたのか?」
      「......両方」
       すると肩に置かれた手は文恵の頭に軽く乗せられた。
      「俺はどこにも行かねえよ」
      「でも、転校とか、そういうのもしあったら、どうしようもないし......」
       ああ、なんで自分でもこんなマイナス思考になってるのか。そんなことそうそうあるわけがないのに。
      「もし来年の春にどっちかが転校したとしても、高校卒業したら身の振り方はどうにかなるだろ。だったら4年じゃねえか。俺はお前に認められるために1年我慢したんだ。だったら4年ぐらい待てるって」
       文恵は驚いて顔を上げた。もしそんなことがあったら終わってしまうと思っていたのに、大地は、4年も待ってくれるなんて......今からの4年なんて果てしなくて想像もできない、ほとんど永劫といってもいいぐらいの時間なのに。
      「どうして......」
      「お前以外に考えられねえからに決まってるじゃねえか。お前はどうなんだ? 俺のために4年待ってくれるか?」
       大地の問いかけは弱く、そうやって彼を不安にさせた自分に後悔する。
       そこまで言わせておいて、答えなんて決まってるじゃない。
      「待つわよ! 大地のためなら、4年と言わず何年でも!」
      「......だったら心配いらねえな」
       そう。あたしが泣く理由はない。勇子のことは気の毒でも、心にのしかかっていたのは自分のことだ。
       なのに、どうしてだろう。涙が止まってくれない。
      「......ごめん。大好き」
       文恵は自分の目の高さにある大地の胸に顔をうずめた。
       周りの目なんて気にしていられなかった。

       しんしんと雪の舞う夜道。文恵と大地は愛子のマンションを後にして、駅方面に向かって歩いていた。
       結局あの後、文恵と大地は場の雰囲気から浮いてしまい、愛子に気を遣われて先にイルミネーションの方に行くように促された。優子と研一、そして残ったメンバーもせっかくなのでメガネ最後のクリスマスイベントを見に後から来るらしい。
       とはいっても、ここからはもう2人っきりの時間である。
      「......ごめんなさい。なんか、あたしが取り乱しちゃってこんなことになって。もうちょっとあそこにいたかった?」
       おそるおそる文恵が訊ねてみると、
      「いいって。予定が早まっただけじゃねえか。それに、イサコのことで不安になったのもしゃーねーよ。人の痛みを自分の痛みに感じるお前のそういうところ、俺は好きだから」
       と、大地に微笑んで返され、文恵はまた泣きそうになった。
       ......ホントに、幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそう。
       すると大地は小さく咳払いして、改まって訊ねてきた。
      「......なあ。手、つないでいいか?」
      「え?」
       文恵が驚いて大地の顔を見上げると、こちらもかなり恥ずかしそうな、きまりの悪そうな表情をしていた。
       それは文恵が待ち望んでいた言葉だった。
       大地はこれまで手を握ろうと提案してくれたことはなかった。文恵もシャイな大地の性格を知っていたのでずっとそれを待っていた。ときにじれったくなって自分から行こうと思ったこともあるが、結局文恵も恥ずかしくなって喉元まで言葉が来ていても声には出せないのだ。
       ......やっぱり、そういうのって男子がリードするものよね。
       そんな言い訳を自分の中で重ねながらも、付き合い始めてから半年以上経つというのにそれすらもクリアしていないことに、不安を感じ始めていたのも事実だった。
      「イヤならいいんだけどな」
       ついにその時が来て、文恵は驚きと喜びでとっさに声を出せないだけだったが、彼は違う意味に受け取ったようだ。
       慌てて文恵はその勘違いを正す。
      「イヤなわけないじゃない! ずっと待ってたわよ!」
       と、勢い余って余計な一言も付けてしまった。
       大地は苦笑して、そして安堵したように息をついて、文恵の小さな右手を少しぎこちない手つきで握りしめた。
       ......あったかい。そう思うのはこの状況に自分の体も火照っているからかもしれないけど、でもそれは大地も同じだろうし......いいやそんなこと。今は何もかも満ち足りていて、他に望むものなんてないもの......あ、でも、もうひとつ上にのぼってもいいのかな。それは大地もどう思ってるんだろう。クリスマスだし、周りのムードとかで盛り上がったら......
       ひとつ階段をのぼったところで、文恵はすでに次の目標のことで頭がいっぱいになっていた。
      「でも、リアルな話」
       そんな時に大地が切り出した。
      「なに?」
      「いや、まあ気が早いんだけどな。別々の高校に行ったら、今ほど会えなくなるんだろうなって。イサコとシュウみたいに離れるわけじゃないけど、登下校も文恵と一緒の俺からしたら、それでも寂しく感じるかもなって思って」
       さっきは4年待つと言いながら、案外こういう女々しいところも見せる。それもかわいかった。
      「それはあたしだって同じかも。大地は水高一本に絞ってるの?」
       県立水の森高校。偏差値は中程度だが、公立校では県内屈指のサッカー強豪校でもある。
      「来年の大会を通して、あそこのサッカー部でやり通せる自信がついたらな」
      「でも、サッカーのレベルを上げることができても、大地の成績だと勉強の方でも相当頑張らないといけないわね」
      「そうなんだよなあ」
       大地は空いた右手で頭を抱え込んだ。日々サッカーだけに打ち込む大地の成績はなかなかひどいものがあった。水高サッカー部を目指すなら、来年は文武を両立させないと難しい。
      「でも、そっか。水高かあ。あたしも水高で十分満足だけどね」
      「いやいや。文恵が俺と同じ偏差値の学校に行くのはもったいないだろ。弁天は厳しいにしても、大曲とかあるじゃねえか」
       弁天高校は文恵達の学区では最難関の公立進学校、大曲もそれに次ぐレベルだ。文恵は中学校に入ってからきちんと勉強はしていたので、成績は良い方に入る。
      「でもさあ、あたしも勉強が好きなわけじゃないのよね。進学校で1年の時から大学受験を意識させられるよりかは、自由な校風なところで好きなことしたいわけよ」
      「生徒会活動とか?」
      「そうそう。高校の学祭は中学校と規模が違うし、その運営とか絶対面白いと思うのよ」
      「なるほどなあ。それで水高か。文恵からしたらお手頃なんだろうな」
      「多分、ヤサコや愛子もあの辺狙うんじゃないかしら」
       もちろん親や先生とも相談を持つべきことなので、現時点では何とも言えない話である。しかし、高校も大地と同じところで、大地の頑張っているところを間近で見られたら、という理想を描かずにはいられなかった。
      「今の俺が水高行きたいなんて言ったら『ばっっかもーん! もっと己を知りなすわーい!』だぜきっと」
      「あはは。今のイッシーのまね? メッチャ似てたわ」
       大地のクラスの担任のやたら甲高い声の男性数学教師である。
       しかし、大地とラインを揃えるとしたら文恵も水高辺りが限界だった。それより下となると先生や親の反対に遭うだろう。大地の物まねもあながち笑い事では済まなくて、目下のところ同じ高校に通えるかどうかは彼の努力次第なのだ。
      「じゃあ、来年は大地につきっきりで家庭教師しないといけないわね。理系科目はハラケンとかにも手伝ってもらって」
      「うわあ。でもそのぐらいしてもらわないとムリか。俺1人で勉強できねえからなあ」
      「そうよ。アンタはやればできるのにやんないから今の成績に落ちぶれてるのよ。昔はいらん電脳知識ばっかり蓄えてたじゃない。その容量分を勉強に使うのよ」
      「すまん、今おかんに説教されてる気分だった」
      「とにかく、やるならマジで協力するわよ。あたしも大地と同じ高校に行きたいもん」
       すると大地も引き締まった表情で夜空を仰いだ。
      「......そうだな。来年は本気出すか」

       イルミネーションはここ1週間は点灯しているということで、普段は家族連れで見に来る人も多いということだったが、今日ばかりは若い男女ばかりが大黒駅前広場を占拠していた。
       文恵と大地はまだ"メガネ"はかけていない。場所を確保したら2人で同時にかけることにしており、今は広場を見回して適当なスペースを探しているところだ。
       しかし、ことここに至って文恵は若干気後れしていた。
       周りの男女はみな一様に大人で、中には高校生ぐらいのカップルもいるが、自分達が一番若いような気がしてならなかったのだ。大地も背が伸びたとはいえ一般成人のサイズに達しているわけではないし、文恵に至ってはまだ標準的な小学生のサイズだ。
       あたし達、絶対浮いてる。背伸びした中学生がやって来たぐらいに思われてないだろうか。
       そんな躊躇から文恵は少し歩幅が狭まってしまったが、手を握る大地の方はそれを引っ張るように前に進んでいた。
      「......せっかく来たんだし、楽しまないと損だろ」
       意地かな、と思った。それでも引っ張ってくれる手は頼もしかった。
       何より、この場で自分を連れていても大地がまったく恥ずかしがっていないことが嬉しかった。
       2人はちょうど空いていた階段のスペースに腰を下ろした。同じ階段にもぽつぽつとツリーを眺めているカップルがいる。
      「さて、"メガネ"かけるか」
      「うん」
       ほとんど最近は電話やメール以外で使うことがなくなった"電脳メガネ"。よくよく考えてみれば、これが自分達を結びつけたのだ。
      「あ〜なんか、思い出しちゃった。昔はよくこれでケンカとかしたよね」
       大地は苦笑して、
      「そうだな。あんときはホントにガキだったな〜俺も。まあ、今もか」
      「大地はずっと変わってないよね。1つのことにひたむきに打ち込む姿勢は」
      「それをひたむきっていうのか? 俺が"メガネ"にもサッカーにも打ち込んだのは、どっちも文恵の気を惹くためだったけどな」
       文恵は少し気恥ずかしくなって俯いた。
       大地の方は昔からあたしのことが好きだったと言ってくれていた。本当はあたしも昔から、と返したいところだけど、あの時のあたしが彼を敵だと認識していたのは事実だ。きっと大地の想いには気付くまいという意地っ張りな意志が無意識に働いていたんだろう。それでもどこかで、彼を異性として意識していた部分もあったはずなのだ。じゃなかったら、例えば夏祭りの時の「だいっきらいだ!」がこんなに耳に残ってるはずがない。
       今となってはすべてが微笑ましい思い出だ。大地とたくさんの時間を共有させてくれたこの"メガネ"には感謝だし、別れは名残惜しい。
       だからこそ、今からこの"メガネ"が見せてくれる最後の景色は、永遠のものとして心に刻み付けたい。
       文恵は1つ深呼吸をして心の準備をした。
      「じゃあ、せーのでかけましょ」
      「わかった」
       大地も"メガネ"を額の上にセットした。
      「せーのっ!」
       大地と同時に"メガネ"をおろした。
       瞬く間に世界は表情を変えた。
       
       2人は光の建物の中にいた。
       黄金色に輝く教会。
       ツリー越しに見える壇上に刻まれた十字架。
       どこからともなく聞こえてくる鐘の音。
       高い天井から舞い落ちてくるのは、花びらのような、雪。
       文恵はそこに2人の未来を重ね、
       なぜだかわからず涙がこぼれた。

       どのくらいそうしていただろうか。声を出すのも忘れてその景色に魅入っていた文恵は、再びその手をぎゅっと握りしめられて大地を見上げた。
      「きれいだな」
      「......うん」
       鼓動はみるみるうちに強く、速くなる。
       真っ白な頭の中でも、文恵は周りの男女の様子を意識していた。
       やっぱり、この場の雰囲気に勢い借りて一気に来るのかな。
       期待と、そして不安。
       緊張のあまり、その前から息の仕方さえわからなくなっていた。
       そして、
      「......すまん。これが今の精一杯だ」
       大地は文恵の手にもう片方の手も添えて包み込んだ。
      「......大地」
       がっかりしなかったと言えば嘘になる。しかし、なぜかそれにホッとした自分がいた。
      「周りのムードに乗っかって、っていうのがダメだった。それはただ、大人ぶりたいだけみたいな気がしたんだ」
       大人ぶりたいだけ、か......確かにそうかもしれない。
       あたしはそれで大地との絆の証が手に入ると思った。けど、この手の温もりはその証には成り得ないの?
       違う。多分、あたしがそれを求めたのはほとんど好奇心だ。今日、手を握られたことに満足していたはずが、途端にまた次の段階のことに気が行ってしまっていた。本当に今、それが必要なのかも考えずに。
       じゃあ、それをクリアしたらその次は? もしここでお互い大人ぶって、大人になったと勘違いして、今のあたしには想像もつかないその次を大地に求められたら? 
       ......とても応えられる自信はない。そんなことですれ違うなんてイヤだ。
       恋愛って、どちらかが速く、どちらかが遅くなるのは仕方ないのかもしれない。実際これまではあたしの方が速かったと思う。でも、いつかどこかで大地の方に抜かれる日が来るかもしれないし、そうなったら、あたしは一緒にいるのがちょっとだけ苦痛になるかもしれない。
       ......全然焦る必要もないよね。あたし達には途方もないくらいの時間があるんだもの。
       文恵は残るもう片方の手を、大地の両手の上に重ねた。
      「そうね。そういうのって全然あたし達らしくないもんね」
      「......文恵」
       申し訳なさげだった大地の表情の緊張も和らいだ。
      「ゆっくり行こ。あたし達はあたし達のペースで」
      「ああ、悪い。じゃあせめて、もう半歩だけ踏み出すことにする」
       そう言うと大地は文恵の肩に手を回して、その体を引き寄せた。
       文恵はそのまま大地に体を預け、きらびやかな景色をじっと眺めていた。
       ......あ。
       遠くの方で、優子と研一らしき2人が唇を重ねようとしているのが見えた。
       大地にあれを見せるのもまた悪いので、文恵は口をつぐんだまま2人から目を逸らす。
       ......ちょっと羨ましいけど、仕方ないよね。あの2人はあたし達より1年も長いわけだし。
       それに、あたしは今のままでも十分幸せだし。
       大地と文恵は、親に告げていたパーティーの終了予定時刻ギリギリまで、"メガネ"の最後の幻に酔いしれていた。

       後日談だが、愛子と元黒客メンバーも大黒駅前広場には来ようとしていたらしい。しかし、その場の雰囲気があまりに甘かったので、男3人は怖じ気づいて逃げ出したというのだ。
      「アンタは結局どうしたのよ?」
      「1人であの光のチャペルに佇んでいたわよ。まだ見ぬ運命の人を思い浮かべながらね」
       文恵には絶対に真似できない。
      「アンタって強いんだか弱いんだかわかんないわ」
      「あ〜、でも今回は色んな教訓を得たわ。とにかく恋愛はタイミングね。クリスマス前に別れるとかマジであり得なかったわ。なんとか1ヶ月延命する方法考えればよかった」
      「そんな微妙な感じでクリスマス迎えても楽しいわけ?」
      「もしくは、別れるなら次を確保しておくってことかなあ」
      「付き合ってられんわ」
       これだからなまじモテる女はイヤだった。
      「アンタはどうだったのよ? あたしが行った時には見つけられなかったけど、キスはしたのかなあ?」
      「ノーコメントよ!!」

       そんな文恵と大地が初めてキスをしたのは、それから1年と3ヶ月後。共に県立水の森高校への切符を勝ち取ったその日だった。
       
       

       
       
       







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      2015.02.13 Friday 15:43
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