
小説について一言。細かいことなんですが僕の小説は基本アニメの設定を踏襲していますけど、矛盾の起こらない範囲で小説の設定も一部取り入れています。例としてはガチャギリは転校生である、などですね。アニメでは語られていないことなんで、そうなのか?と思われた人もいるかもしれないですが、そういうことなのでよろしくお願いします。
台風の夜、マジで一睡もできませんでした。僕は近畿圏に住んでいるのですが、夜通しすごい風が吹いていたので家がつぶれるんじゃないかと本気で心配していました。僕の体験した範囲では過去最強の台風だったかもしれません。
そんなことはさておき、今週は先週の続きということでテーマソングについてですね。「プリズム」では、人はたった一つの影、そこにある明日に続いている道を見失ってしまうということを書きました。この辺はアニメの中でもイサコが言っていましたね。では今日は「空の欠片」の歌詞を見ながら、その道はどのようになっているのか考えたいと思います。これもアニメの中でのメッセージと同じだと思うのですが、一応見ていきます。
これもタイトルから考えていきましょう。「空の欠片」とは何を表しているのか。その景色を想像してみますと、雲が夕空を覆っていて、ほんの一部分だけその雲が晴れており、そこからは鮮やかなオレンジが見えているといったところでしょうか。「プリズム」の「眩しすぎて見つめることができない太陽」とは、また違った景色ですね。
「プリズム」における太陽の光は1つの光がいくつにも分光するので、眩しすぎて見つめられないとしました。ここではその逆で、見えているのは空の欠片から差し込む1つの光です。「微かに見える空の欠片を追いかけて」ということで、その光を目指しているということですね。
前回、「プリズム」の太陽をメガネをかけた時に見える世界としました。この歌でもそれを当てはめるなら、くもり空というのはどこに行けばいいかわからないような状態です。しかし空の欠片から光が差し込んでいます。それをたとえるなら、道しるべですね。空の欠片を追いかけ、この道を進んだならいつかまた君に会えるということでしょうか。歌詞の順番からすれば逆になりますが。
2番サビ「並んだ影が長く夕陽に伸びて 明日まで届いていた」というのは、「プリズム」の「明日へと続くこの道に いつも影は一つ」に対応していますね。影を本質とみなすなら、影を作り出す光こそ本物ということになります。「プリズム」の光が真実の氾濫なら、「空の欠片」は光が1つに影が1つと、なんて言うんでしょう、世界があるべき姿に落ち着いていると思います。もちろんメガネをはずしたわけではなく、その世界を見ているのは1人の人間、ここではヤサコですから、ヤサコが確かなモノをつかんでいるということですよね。
じゃあ具体的に「空の欠片」とは何のことでしょうか。これは明日への道しるべであり、君への道しるべでもありますから、イサコの言葉を借りれば、「繋がり合う道があることを信じ続ける心」ではないでしょうか。道があることを信じられなくなったら、本当にその道はなくなってしまう。そう考えるなら、その道を繋ぐ道を照らしているのは、信じ続ける心だと僕は思います。
ところでこの歌、誰がその場にいると感じますか?普通に考えればヤサコとイサコですよね。「並んだ影」とあるように一人ではないですし。でも「いつかまた君に会えるだろう」と言っているので、君をイサコ、主人公をヤサコとするならちとおかしいですね。さらに言えば、アニメで事件が解決した後にヤサコとイサコは会ったわけではありませんので、このシチェーションはありえないですよね。
そこでまた僕の勝手な想像なんですが、ここにいるのはヤサコほか、フミエやハラケンやアイコ、黒客メンバーなんだと思っています。歌詞2番Bメロ「特別なことなんてないのに毎日は 季節の中で出会いも別れも連れてくる」とありますが、出会いはもちろんイサコと出会ったこと、そして別れもイサコと別れたことなのではないかと思います。
あの事件の収束から数週間後、
「今日はひとつ残念なお知らせがあります。入院して学校に来られなかった天沢さんですが、退院してすぐ、お母さんとともに金沢に引っ越していきました。天沢さんもさよならを言うのがツラかったようで、引っ越しが終わってからこのことを伝えてほしい、ということでした。みんなも急なことで驚いているとは思いますが、また彼女にメールでも送ってあげてくださいね。」
「え〜っ!イサコが!マジかよ〜。」
マイコ先生からの突然の知らせに、クラスでざわめきが起こった。
「あ〜あ、イサコ。ほんとに何も言わずに帰ったんだな〜。」
放課後、川沿いの道を歩いていくヤサコ、フミエ、ハラケン、アイコ、そして黒客のメンバー達。ダイチが石を蹴りながらつぶやいた。
「なんか、いないならいないで寂しいわね。それになんのお別れもしてないし。」
フミエもダイチに同調する。誰もがそのことに悔いが残っていた。そんな中ヤサコは、イサコと手を取り合った時のことを思い出していた。そしてあの時交わした笑顔が、なにより勇気になっていることに気づいた。
「でも、きっと会えるよ。またどこかで。私はそう信じてる。」
ヤサコがそう言うと、曇り空の中からほんの少しだけオレンジ色の夕焼けがあらわれた。ヤサコは自然とその空の欠片を目指して走りだしていた。
「そうね、アイツもあの事件を乗り越えて頑張っているんだから、私たちも負けてられないわね。」
フミエがヤサコに返し、一緒に走り出す。そしてうなずきながらハラケンやアイコ、ダイチ達もヤサコと一緒に走り出す。いつのまにか、夕陽に照らされて並んだ影が、ずっと遠くまで伸びていた。
「空の欠片」を聴いているとこんな物語が浮かんできます。それでは今週はこの辺で。さようなら。