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2015.02.13 Friday
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    『電脳コイル 春』再アップ

    2014.09.15 Monday 11:27
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      閲覧頂きまして、ありがとうございます。
      川島奏です。

      先日、『電脳コイル 春』をまた読みたい、
      という嬉しいコメントを頂きました。
      "ガンダム太郎"さん、ありがとうございます。

      『春』は規制によって削除してしまった経緯があるものの、
      今は別サイトで『電脳コイル』の二次創作も
      増えてきているようですし、
      そんなに気にすることでもなかったかなと、今は思います。

      この件については、
      以前の記事(もう1年以上前になりますが)でも、
      また再アップを検討します、と宣言していましたからね。

      この度頂いたコメントが良いきっかけになりました。
      下記のサイトにアップロードしましたので、
      またよろしくお願いします。

      http://firestorage.jp/download/d6a598854813ea3afd43fea0b2f6f81f17a00cab

      ダウンロードパスワードは、"springcoil"です。

      zipファイルになっています。
      解凍してもらうと、話数ごとのフォルダに分かれており、
      さらに開けてもらうと、パートごとのpdfファイルに分かれています。

      手直しをするかどうかという点については、
      それをやり出すとかなりの時間がかかるので、
      もう当時のままのファイルをアップしています。
      特に序盤は読み辛いかと思いますが、ご了承下さい。

      あとは次回作について触れておきます。

      『電脳コイル』を題材にした次回作は、
      これまで出すと言ったり、やっぱり出さないと言ったりで、
      フラフラしてしまい申し訳ありませんでした。

      アニメ『電脳コイル』放送もだいぶ前のことですし、
      今更その二次創作もな、と思ったりもしましたが、
      やっぱりこっちの次回作もお披露目したいな、
      というのが正直な気持ちだったりします。

      オリジナルの新作にかかるよりも、
      ある程度書き溜めがあって
      ストーリーも考えてあるこちらの方が、
      明らかに完成は近いですし。

      ですので、小説の執筆は先にこちらの次回作にかかろうと思います。

      時間はまだかかると思いますので、
      気長にお待ち頂けると幸いです。

      それまでは、『春』をはじめとする
      過去作品をお楽しみ頂けると嬉しいです。

      また今後もよろしくお願いします。








       
      『電脳コイル 春』について | comments(5) | trackbacks(0) | - | - |

      『春』の反省点 その1 「電脳犯罪対策係」って

      2011.10.02 Sunday 23:24
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          『春』は既に僕の中では過去のことで、本当は序盤で滅茶苦茶だった文章の体裁なども整えないといけないのですが、もう悪い見本としてそのまま放置しておこうかなと思っています。最近は恥ずかしくて読み返す気も起こらないのですが、しかしそこから反省点をあげて、次回作につなげていかなければいけません。

         ということで、この企画では『春』において滅茶苦茶だった内容を取り上げ、大いに反省したいと思います。

         で、まず思い浮かんだのが「電脳犯罪対策係」という組織の設定の曖昧さです。

         最近、僕は誉田哲也さんの警察小説(主に姫川玲子シリーズ)などを読んだりしているのですが、やはり警察小説だけあってその実態がすごく細かく描かれているんですよね。それが結構思っていたのとは違っていて、大いに参考になります。(ちなみに、シリーズ第一作目『ストロベリーナイト』はドラマ化もされましたが、本シリーズの中では色々な意味で最も刺激的な内容です。残酷描写もありますが、一読の価値はあると思います。誰しもの内面に潜む異常性というテーマに、本当にぞくりとさせられるところがあります)。

         この小説の影響で、警察の役職や階級の相関関係などもきちんと考えるようになったのですが、それに当てはめると、電脳犯罪対策係の係長である竹下直樹はあり得ない出世をしていることに気付きました。

         彼のいる大黒市警は規模としては署にあたりますが、署内の何らかの課に属する係長になる場合、階級は警部補であることが必要のようです。さて、警察官は『踊る大捜査線』などでもよく耳にする「キャリア」と「ノンキャリア」に分けられます。彼の場合は元々警察官を目指していなかったという設定上「ノンキャリア」とするしかありませんが、その場合警部補になれるのは最短でも26歳かららしいんですよね。彼は作中では24歳としていたので、絶対に警部補にはなれません。

         ほんとに深く考えず適当に設定したらこうなってしまいました。未来の話なのでその時警察の昇進形態が変わっているかもしれないという逃げ道があるのですが、設定的にムリがあったことはここでお詫び致します。

         しかし自分がもっと反省しているのは、「電脳犯罪対策係」が一体何のために設立されたのかがまったく不明のまま終わってしまったところです。

         一応ダイチのメール事件でもあったように、振り込め詐欺などのインターネットを利用した犯罪全般を扱う部署としましたが、それが直樹のよって創設されたとは、じゃあそれまでの警察は一体何をしていたんや、という話になってきます。

         で、実際に警視庁には「サイバー犯罪対策課」という部署が存在します。今年4月に「サイバー犯罪対策総合センター」から格上げされたらしいのですが、まあこれで直樹創設説は成り立たなくなりました。しかも名前もちょっとカッコいいです。意味は一緒ですけど。

         この「サイバー犯罪対策課」の主な設立目的は、インターネット上の有害情報取締強化ということらしいですが、では最近流行の企業への不正アクセスなどはどの部署が担当するんでしょうね。じきに「サイバー犯罪対策課」がそうしたハッカーを追うようになるのでしょうか。実際日本でハッカーが逮捕されるなんてことが起こればの話ですが。

         さて、「電脳犯罪対策係」に話を戻しますと、規模が「係」なのに執筆中はどこの課に属するのかさえ考えていませんでした。自信がなかったので避けて通っていたんですけどね。最近調べた結果をふまえると、大黒警察署生活安全課電脳犯罪対策係でよさそうです。

         しかしながら、インターネット上の全犯罪を取り扱うとするには非常に頼りない部署です。なにせ係長が警部補にもなれない24歳の若造ですからね。そもそもインターネット上に管轄区域の線引きなんてありませんから、本来なら県警に1つ置いておけば十分事足りる部署と言うこともできるのですが。

         だからこれを今になって無理矢理定義し直すとすれば、やはり電脳都市である大黒市に設置されたというところに意味を見いだすしかありません。"メガネ"を使った空間の犯罪を取り締まることを目的として設立されたとすれば、一応話の筋としては通ります。

         例えば、玉子は空間管理室にいて、金魚イリーガルで空間を滅茶苦茶にしたダイチを逮捕しようとしましたよね。しかし、本来なら民間人の玉子に逮捕権はありません。これが現行犯なら誰にでも逮捕権は発生するのですが、あの時のダイチを現行犯逮捕できるかといえば、なんか微妙な気がします。

         「電脳犯罪対策係」は、そうやってイリーガルなどを使って空間を破壊した犯人を逮捕するのが主任務とすれば、まあまあ存在意義があるような気がします。つまり「電脳犯罪対策係」設立には、空間破壊者を直接自分たちの手では捕まえられないメガマスの思惑が絡んでいた、という設定が成り立ちます。実際に作中で直樹は対策係がメガマスの手駒にされていることを自覚していましたし、久美子にも警察に干渉しようとするメガマスへの反発心もありました。すべては、この裏設定にて説明がつけられると思います。ほとんど後づけですけどね。

         さて、問題はこれからです。『春』の終わりにてメガマスは崩壊しました。そして、大黒市や金沢市で連続して起こった連続空間事故は、すべてメガマスのプロジェクトが原因となっていました。一連の事件を通しての反省と、創設時の黒幕であるメガマスが消滅したという事実。「電脳犯罪対策係」は、価値が見直され、大きく規模が拡大される機会を得ました。それはエピローグにもあった通りです。

         次回作の一方の主役、沢口大地は、そうして飛躍を遂げた「電脳犯罪対策課」に飛び込むことになります。ところが、その「電脳犯罪対策課」の内部には不穏な動きがあって......

         それでは本日はこのあたりで締めます。

         












         

         
        『電脳コイル 春』について | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

        『電脳コイル 春』あとがき

        2011.09.08 Thursday 23:04
        1
         
         3年前の夏。アニメ『電脳コイル』の再放送を見終わった僕は、この作品から発せられるメッセージに共鳴し、ストーリー展開に興奮し、登場人物達の成長に感動し、活力を得る一方で物語が終わってしまった寂しさに苛まれていました。

         できることなら、この続きを見てみたい。”あの事件”で成長した彼女達が手を取り合って戦う姿を渇望したのは、おそらく自分だけではなかったと思います。

         そこで思いついたのは自らの手で物語を紡ぎ出すという方法。ないものは自分で生み出すしかない。自分の欲求を自分で満たすという、自己満足的な発想から生まれたのが、この『電脳コイル 春』という作品です。
         
         このブログの開設当初に述べた通り、それをweb小説として掲載したのはひとえに完結させなければならない義務を自らに課すためです。そうして自分の物語を楽しんでくださる人に出会えることは幸運であり、もちろんそれは大変に嬉しいことでした。僕は常々、自己満足の副産物が他者の満足となることこそが理想の形だと思っています。

         まずこの小説を完結できたことで、僕は自分の中の欲求を満たすことができました。さらに、読者の皆様が楽しんでいただけたのであれば、これ以上の喜びはありません。ご感想やご指摘を寄せてくださった方々には、心より感謝しております。

         さて、物語が完結した今、改めて僕が触れておきたいのは「なぜ『春』なのか」という点です。3年前の執筆開始当初、僕は何を思いこのタイトルをつけたのか、振り返ってみたいと思います。

         しかしながら、正直に申しますと、今となってはそれも思い出せません。つまり、これといった理由よりも物語の時期設定や漠然とした『春』という言葉のイメージからつけたタイトルだということです。しかし、物語の核心に迫るタイトルというわけではなく、抽象的に物語を包括するタイトルにしたのは、この3年間の長大な執筆期間をふまえると良かったのかもしれないと思っています。

         というのも、この作品は特に深い考えやメッセージがあって書き始めたわけじゃないからです。僕が伝えようとしていることは、本当にその時々にあって変わっています。この作品を、一言で表現するというのは無理だと思います。

         でもあえて今、この作品の内容に『春』という言葉を結びつけるとしたら、このような解釈になるのではないでしょうか。

         つまり「春」とは「新生活」と同義語と捉えることができます。新しい学校、新しいクラス、社会人デビューなどなど、「春」という言葉に内包されているのは「はじまり」であり、「希望」であり、そして最大の割り合いを占めるのが「不安」です。

         そして、小説のあらすじにも書きました「出会い」「別れ」も「春」を象徴する言葉です。

         「電脳コイル」という作品のメッセージの1つは「痛みから逃げてはいけないこと」。『春』の後半で僕は、今一度これらの言葉の意味を考え、新生活への不安やそこでの出会い、そして避けられない別れを描くことを意識しました。

         本当は季節は関係なく、「自分が変わらなければならない」と意識することで訪れる様々な状況や感情を象徴する言葉こそが「春」なのだと思います。これをふまえると、アニメ『電脳コイル』にも、この言葉が当てはまることになります。つまるところ僕は、原作のメッセージを繰り返しただけなのかもしれません。

         しかし僕はそれでも良かったのかもしれないと思います。「コイル」とは輪のことであり、そのメッセージはつながっていくものだと信じているからです。なおかつ、「コイル」は螺旋状の構造をしているので、常に他の誰かにバトンは渡されていくことになると思うのです。ヤサコからイサコへ。イサコから沙織、詩織へ。このリレーこそが、僕が描きたかったことだったのだろうと思います。

         また、エピローグの最後の最後でヤサコが思ったことも、まさに「春」という言葉に象徴されますね。こちらの方も、やはり原作ファンの方なら気になるだろうと思い、自分なりの解釈で書かせていただきました。その表現が拙い故、非常に読んでいて気恥ずかしい文章になってしまいましたが、どうか、さらっと流していただければ幸いです。

         それはさておき、上述した理由から、この物語はやはりイサコの物語となりました。彼女が登場しない第1部においては、彼女も主役の1人として考えてはいましたが、第3部終盤においてはほぼメインになっています。このブログでは昔、ハラケンが主役になるだろうと書いたこともありましたが、少し彼の物語は小さくなりましたね。

         やはりこれだけ執筆に長い時間をかけてしまうと、自分の中での考え方が変わってくることがあります。ハラケンの物語などは、当初はもう少しカンナのことで苦悩するような展開を考えてはいましたが、途中からそれもどうなのかと段々思うようになり、結局はあの形で落ち着きました。

         イサコに関しては、第2部を経て愛着が湧いたというのもありましたし、彼女を中心に据えないわけにはいかないだろうという思いが強くありました。やはり、「電脳コイル」という作品を象徴するキャラであり、彼女の宿題はさらなる成長だろうと思っていましたから(彼女が僕の手によってちゃんと成長できたのかどうかは、読者の皆様のご判断に委ねたいと思います)。

         ここまで書いていればお察しされるかと思いますが、この壮大な物語は、はじめからすべての準備をしていたわけではありません。物語の核となる要素を作り込み、あとはそのチェックポイントを通ることを意識しながらも、思いついた道をドライブするというのが、この作品における執筆のスタンスです。世界観は書いているうちに段々と出来上がってくるものなので、本当に1つ1つの積み重ねです。後で自分で読み返しても、本当に自分で考えたのかと思うほどスケールの大きな話に感じることがありますが、3年も時間をかけていれば、それなりの規模になってしまうのは必然だと思います。

         それだけに綿密にストーリーを練っていない分、上述のように方針はブレまくっていますし、作中で整合性のない部分があったり、矛盾が起きたりしていると思います。1度アニメとの設定の矛盾を指摘されたことがありますが、他にも同様のことが起きているかもしれません。他にも誤字脱字などは枚挙に暇がないほどだと思います。その辺りの読み辛さに関しては、読者の皆様に重ね重ねお詫びしたいと思います。

         本当なら、1人で書いている以上間違いは仕方がないと割り切ってしまいたいのですが、それはほとんどのweb小説家の皆さんがされていることですから、言い訳はできませんね。

         また、この場で触れておきたいのはSF的要素についてです。特に第3部の中で焦点となったAIについて、僕の考えを載せておこうと思います。

         包み隠さず言いますと、この物語で取り扱ったテーマは自分の手には負えないものだったと思います。本来ならもっと掘り下げられるようなネタであり、物語に深みを与えるようなものになり得たと思いますが、下手に踏み込むと自ら迷宮の奥深くに入りこむような気がしましたし、実際そうなってしまったきらいはあります。

         そのため、この問題を巡る解釈で、作中の登場人物には妥協させてしまった感がありますし、当事者たるAIの心情描写も十分だったとは言えないと思います。しかし議論を尽くしても一朝一夕で答えの出るものではなかったのは確かです。

         この、AIと人との関わり方というのは、今後の自分の創作活動においても主たるテーマになるような気がします。僕自身もまだまだSFに対する知識は浅く、もっと多様な作品に触れて自分なりの解釈を構築する必要があると痛感しています。

         ただ、SFへの解釈や取り組み方が未熟な僕ですが、このAI観を構築するにあたって、大いに参考にした作家がいます。オーストラリアのSF作家、グレッグ・イーガンです。

         イーガンの作品はハードSFの部類に入り、理系要素がふんだんに詰め込まれています。現代にはない未来の技術がどのような論理で機能しているのか(例えば『電脳コイル』でいえば、量子回路がどのように人の意識をキャッチしているのか)を説明するSF作品はあまり多くはありませんが、このイーガンは化学物質レベル、量子力学レベルでそれを説明しようとします。生粋の文系人間である僕には、作中で何が起こっているのかさえわからない作品もあります。

         本来なら自分には縁遠い作風ではありましたが、この作家の本に出会ったのは、僕の恩師とも言うべき人から紹介していただいたからです。その方に「実は僕、SF作品を書いているんです」というお話をした時に、「じゃあこれを読んでみるといいよ」と薦められ、お借りしたのがきっかけでした。

         イーガンの取り扱うSFは実に多様で、医学、宗教、性、時空に関係するものもあります。その中にはAIを取り扱った作品もあり、僕が最も気に入っているのがそれです。

         衝撃的だったのは、『祈りの海』という短編集に収録された、「ぼくになることを」という30ページほどの作品。今でも初めて読んだあの時の興奮は忘れられません。内容は、生まれた時から脳のバックアップ用ニューロンコンピューターを用意し、自分の脳をコピーさせ、脳が衰え始める時点で「スイッチ」するのが当たり前となった社会の話。まさにエピローグで大谷記者に語らせたのはこの未来像であり、『春』という作品にも多大なる影響を与えた物語です。

         話を戻しましょう。この『春』という作品に取り組んだことによって、将来的に自分が挑みたいテーマというものが見えてきた気がします。それに、小説を書くにあたって必要なことや、自分の未熟さをこの3年でイヤというほど感じました。今は書き始めた頃とはまったく違うものが見えていますので、自分でもこの3年でそれなりに成長できたのではないかと思っております。おそらく、ようやく「書き手」としてのスタートラインに立ったというところでしょう。

         やはり僕は創作が好きです。当たり前のように毎週一定量を更新できていたのも、書くことが楽しくて仕方がなかったからだと思います。今後ももちろん、創作活動は続けていきたいと考えています。

         そういうわけで、既に次回作の構想に入っております。それを皆様にお見せできるのはいつになるかわかりませんが、またいつかその時が来た時は、何卒よろしくお願いいたします。当ブログにて、進捗状況は報告していくつもりです。

         それでは最後になりましたが、『電脳コイル 春』に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

         2011年9月8日 川島奏
         

         

         

         

         

         
         









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        『電脳コイル 春』最終回直前号

        2011.09.04 Sunday 21:16
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           みなさん。ついにこの時が来ましたよ。振り返るのも億劫になるほどの長く険しい道のり、執筆開始3年(連載開始2年半)という途方もない時間を経て、『電脳コイル 春』次回いよいよ完結です!!

           ずーっと完結時期が延びる延びるとこのブログでは詫び続け、今年の春には終わると思っていたのが気付いてみればもう夏も終わり。読者の皆様には何度も何度も迷惑をかけ続けてきた僕ですが、今回は本当の本当です。

           前回などは初めての4パート更新という帳尻合わせをしましたが、やはり人間、ゴールが見え始めるとラストスパートをかけることができるんですね。本当に苦しい中でも、その後に待ち受けている解放感を想像することで一気に乗り切ることができるんだということを、改めて実感しました。

           さて、次回9月8日の更新は最終第26話の最終パート(こちらも20パート目なんですよね。アニメに合わせて26話構成にしたのに、完全に2話分以上の分量になってしまいました)と、最後にエピローグを投稿して物語は完結ということになります。とはいえ、まだかなりの分量がありますので、たっぷり楽しんでいただけると思います。

           その更新が完了した後、同日中にこちらのブログにあとがきを載せるつもりです。執筆が終わって、改めてこの作品を振り返った時の自分の感想などを書き連ねる予定ですので、本編を読み終わった後は、是非こちらものぞいてみてください。

           なお、来週のブログの更新はあとがきにかえますので、日曜日の更新はありません。次々回の更新は再来週の日曜日となります。その時は『電脳コイル 春』創作日記というブログのタイトルやデザインなども変えて改装オープンするつもりですので、また以降もよろしくお願いします。

           それでは本日は短いですが、この告知だけで失礼したいと思います。『電脳コイル 春』、どうぞ最後までお楽しみください。
           

           
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          『春』要点整理③ -プロジェクト"SPRING"の実験-

          2011.07.17 Sunday 23:00
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             えらい台風が来ているようですね。まあ、程々に暴れてもらって、この暑さを吹き飛ばしてくれるとありがたいのですが。

             さて今回は途中で放置していた要点整理の3回目にして最終回をお送りします。今更そんなことをして意味があるのかって感じですが、1度やり始めたことなので一応ここで締めくくることにします。僕自身、執筆してからだいぶ時間が経っているので、細かい部分にあまり気がまわらないかもしれません。ですので、今回は簡潔にまとめたいなと思っています。

             復習するのは新空間計画が立ち上がってから、プロジェクト"SPRING"が形になるまでとします。これまでのシリーズと同様、ネタバレ要素満載でお送りしますのでご注意ください。


            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

            ・2026年 年末
             ようやく新空間計画が始動して満足していた神崎だったが、ここで新たなる問題が発生する。この夏の事件で姿をくらました猫目宗助が、メガマスのライバル会社CGWに拾われたという知らせが入ったのだ。
             宗助はCGWに内在する旧コイルス一派とともに、再びメガマスを狙う可能性がある。それは新空間計画の完成に向けて障壁となるかもしれない。そう考えた神崎は対策を打つことにした。そこで神崎に協力したのは旧コイルスの技師で新空間の設計にも関わっている細川技師(香川昭大)だった。
             細川はCGWのコイルス一派と連絡お取り合い、スパイとして彼らの動向を把握するとともに、その動きを操った。コイルス一派も、まさか旧コイルスの技師である細川がメガマスに加担して自分たちを嵌めようとしているなどとは思わなかった。
             神崎は彼らを釣る餌として、古い空間を現出させる空間制御プログラムを用意した。後にコイルス一派は細川の誘導でこれをハッキングして暴走させることになるが、これも新空間計画の存在を彼らに悟らせないための神崎の策略でもあった。
             
             また、この時期にプロジェクトチームの幹部である小野隆は、新空間という概念とそれの完成に向けて必要な技術を卒論で提唱した竹下直樹と会い、プロジェクトへの参加を要請した。直樹の任務は、新空間が通常空間に及ぼす影響を観察すること。直樹はそれを引き受けるかわりに、新空間計画完成のあかつきには自分も技術者としてメガマス加えてほしいと申し出る。小野はするも、そもそも直樹をプロジェクトの中枢に据えるつもりはなく、利用価値がなくなったら末端として切り捨てることを考えていた。それには、小野自身の直樹の才能への嫉妬もあった。

            ・2027年 1月から2月
             新空間が順調に構築されるのを尻目に、神崎は自身が温めていたもう1つのプロジェクトを始動させた。それこそがプロジェクト"SPRING"で、プロジェクトチームのトップである金沢支社長にも認可を受けた。生身の人間の意識を新空間に送る一方で、取り残された肉体には人工知能AIを移植するというこの計画の可能性を、支社長自身も強く感じていた。プロジェクトを立ち上げるにあたって、彼は"SPRING"の可能性を政府関係者に秘密裏にプレゼンし、また世界に展開するメガマスグループの人脈を使って、各国の要人にも同様のことを行い、そこからプロジェクト完成に向けての資金を集めた。
             新空間が完成した直後、細川技師は真っ先に桐野詩織を新空間の中に入れた。交通事故以来、ずっと意識を閉ざしていた詩織は、新空間の中で半年以上の眠りから覚めることになる。

            ・2027年 3月末
             空間制御プログラムが完成したのを見越して、猫目宗助は再び大黒入りした。手はずでは、この後細川がメガマス内部のネットワークセキュリティを解除し、CGWがそれをハッキング、それをここ大黒で宗助が暴走させるという手はずになっていた。
             しかし、宗助は大黒入りした後、間をおかず神崎の手の者に拉致される。彼はプロジェクトチームの本拠である弁天のアプリコット社が所有する研究施設で強制的に電脳体を分離させられ、肉体には量子回路が埋め込まれる。これで、AIの支配する猫目宗助が誕生する。彼は、プロジェクト"SPRING"の最初の被験者となった。

             またこの時、直樹もまた行動を起こしていた。架空請求の犯人に仕立てたダイチを警察に連れてこさせ、彼のメガネを預かり、そこに新空間へのアクセスプログラムを仕込む。その後、彼のメガネを媒介にして、彼とファイルを共有する大黒黒客、そしてコイル探偵局へとそのプログラムは渡っていった。これにより、彼らのメガネは廃ビルに現れたメタバグを発見できるようになった。
             直樹の目的は彼らに廃ビルで電脳戦争を起こさせること。その時に観測される新空間の影響をつぶさに記録し、彼はプロジェクトチームに報告していた。この時彼の報告を受けていたのは細川技師だった。

             同時にプロジェクト"SPRING"では2人目の被験者にもAIが移植された。それが桐野詩織だった。詩織のAIの実験はうまくいったものの、そのAI自身がどういうわけか新空間に近い場所にいることを好むという結果が得られた。彼女は大黒市の中でも新空間に近いとされる廃工場によく出向いていた。新空間の実験を行っていた直樹は彼女の存在に気付いてはいたものの、彼自身は"SPRING"のことは知らなかったので不審に思うだけだった。

            ・2027年 4月1日
             この日に宗助のAIは空間制御プログラムを暴走させた。しかし、宗助の行動はすべて神崎によってコントロールされていた。宗助は廃ビルで子ども達を集団失神させるも、当初のCGWの思惑である古い空間に電脳体を閉じ込めて人質にとることは叶わなかった。それは細川が制御プログラムを外から操っていたからである。
             神崎の描いたシナリオはこうだった。宗助はこの後警察に逮捕され、すべての罪を自ら背負うような自供をする。これにより、CGWは宗助の道連れにされるのを免れることになる。もしCGWにも捜査のメスが入れば、今度は空間制御プログラムを開発し、ハッキングされたメガマスの信用問題にもつながる。それを阻止するには、宗助1人が罪を被るのがもっとも丸く収まると神崎は考えたのだ。後に神崎はCGWと連絡をとり、彼らがメガマスに歯向かったことを水に流すかわりに、2度とこのようなことを考えないようにと釘をさした。宗助をAIとすり替えたのは、"SPRING"の実地試験と、宗助1人に罪をなすり付けてCGWに貸しを作り、彼らの今後の動きを封じるという2つの目的があったのだ。

            ・2027年 4月中旬
             宗助の件も片付き、桐野詩織のAIの実験もうまくいった。色気を出した神崎は、次にまた別の実験を思い付く。それは、肉体の持ち主以外の人物のAIを移植したらどうなるかというものだった。その被験者として選ばれたのは、またしても詩織だった。
             しかし、いきなりまるっきり別人の人格とすり替えるのはどうかと思った神崎は、桐野詩織の架空の双子の姉妹という設定で、桐野沙織という人格を作りだした。詩織が元々住んでいた金沢に移し、ごく普通の中学生として、戸籍を改ざんして学校に登校させる用意も整っていた。
             しかし、そこでミチコを原因とする空間の不具合が起こった。それを抑えるために神崎は沙織を利用することにした。その時沙織のAIに、自分には交通事故に遭って今は意識が異空間にある母と姉がいて、彼女達の身柄は神崎が預かっているという架空のシチュエーションが記憶として流し込まれた。このためAIの沙織は神崎の言いつけを忠実にこなさなければならなかった。
             神崎もこれをAIの実験の1つとして考えていた。AIが人間社会に違和感なくとけ込むことができる技術が完成した今、AIの意志をコントロールできるということは強大な力となる。
             ではAIの意志をコントロールするにはどのような方法があるか。神崎は2つ考えた。1つは、AIの行動を直接プログラムすること。宗助の場合はこれだった。しかしこの方法の短所は、AIがプログラムに忠実になるあまり、状況の変化に対応できず、融通が利かなくなり、結果そのAIの言動がおかしくなることが想定された。実際、宗助の場合も関わった人は彼の言動を訝しんでいた。
             もう1つの方法は、AIにある状況を背負わせて、その行動をとらざる得ないように追い込むこと。沙織はこちらにあてはまる。実際には脳死状態で助かる見込みのない母と、本当の自分自身、桐野詩織という架空の姉のために沙織は、神崎の言う通りに動かなければならなかった。
             しかし、沙織は最後の最後に、神崎の命令に背きイサコに自分の秘密を打ち明けた。自分がメガマスの幹部の指示により行動していたこと。イサコを追いつめることは、本当は本意ではなかったこと。
             沙織は自分自身がAIであるとはもちろん知らない。しかし神崎は、彼女のAIが随分と人間的に仕上がったことを複雑な気持ちで捉えていた。

            ・2027年 4月下旬〜5月上旬
             旧第三小跡地で電脳体分離を起こし、新空間に迷い込んだヤサコ、ハラケン、フミエ、アイコ。このうちハラケンだけはこの日のうちに電脳体が戻って来なかった。
             この事態を受けて竹下直樹は責任を感じ、自ら彼の電脳体が戻って来るように画策する。直樹は既にプロジェクトチームからは蚊帳の外に置かれ、彼らに不信感を抱いていた。彼らの意志とは関係なく、彼は自分自身の手でハラケンの電脳体を救おうと考えていた。
             その現場はヤサコ達に発見された直樹は自分の素性を暴露。その翌日にはメガマスにより取り調べを受け、自らの罪を反省。事件解決に向けて微力を尽くすと誓う。
             しかしハラケンの意識は記憶を失ってはいたが思ってもみないほどあっさりと戻った。ヤサコ達は安堵しながらも急展開に戸惑いを隠せない。これもプロジェクトチームの仕業だった。
             プロジェクトチームにより、ハラケンもまた"SPRING"の被験者としてAIが移植された。しかし彼の実験は宗助や詩織とはまた趣旨の異なるもので、これまで体内に埋め込まなければならなかった量子回路を、表皮に貼付けるだけでも問題なく機能するかという実験だった。
            後にダイチが見つけることになるが、ハラケンの首筋には肩こりを解消するために使うような丸い絆創膏が貼られていた。そこからヒントを得たイサコは、宏文の書斎で見つけた研究日誌の内容や一連の事件の状況証拠から推理し、彼がAIであることをいち早く見抜いた。
             その日のうちにプロジェクトチームがメガマス本社において新空間計画とプロジェクト"SPRING"をプレゼンテーションし、すべてを打ち明けた。


            ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

             以上、簡潔と言いながらかなりがっつり書きましたが、これまでの流れを整理したことになります。これ以降の出来事は、第25話以降をお読みいただければと思います。

             さあさ、要点整理の宿題も片付けましたので、来週からはまた気ままな内容で進めたいと思います。久しぶりに川島の本棚でもやりましょうかね。それでは。




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            『電脳コイル 春』ラストスパート

            2011.07.10 Sunday 22:41
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               こんにちは、川島です。暑いですね。梅雨も明けました。いよいよ夏本番というわけです。厳しい電力事情ではありますが、なんとか熱中症には注意してこの猛暑を乗り切ろうではありませんか。

               と、しれっとあいさつをしましたが、こちらは1ヶ月ぶりの更新なんですね。最近本当に月に1回しか更新できていませんし、しても内容はほとんどないですし、サボり過ぎました。

               本編の執筆でほとんど時間を取られているというのもありますが、それよりも書くネタがないと。前まで要点整理などもしていましたが、あれも結構腰を据えないと書けないので、なかなか書こうという決意ができませんでした。まああれも、新空間計画が始動してから物語が始まるまでの出来事を整理するという予告をしておきながら放置してありましたが、次回あたりで区切りをつけたいと思います。その後は「川島の本棚」などを挟みながらネタを考えておきます。

               それで今回、何を書いておかなければならないのかというと、ついに「春」が最終話に突入したということです。この連載終了までの残り約1ヶ月ですか。ラストスパート月間としてテンションを上げつつ、毎週ブログも更新、なおかつこれまで週1パートだった本編の更新も週2パートに戻し、最後の追い込みをかけたいと思います。年が明けた時の受験生のような気持ちで、力を振り絞りたいと思います。既にバテバテですけどね。

               しかし、本当にアニメと同じ26話まで話がのびるなんて書き始めた頃は思ってなかったですねえ。読者の皆様も誰も予想していなかったのではないでしょうか。ここまでくると、アニメと合わせるしかねえだろってところで調整はしましたが、一体誰得なのやら。

               さあ、四の五の言っても仕方なし。物語をうまく締められるか、この連載約2年半の積み上げを完成させるか、台無しにするかはこの最終話の展開次第。皆さん。どうか彼女達の戦いを最後まで見届けてください。26話の後にエピローグもつける予定です。

               それからですね、これはちょっと驚いたのですが、久々に、というよりオフィシャル小説完結以来、電脳コイルのオフィシャルで大きな動きがありましたね。僕は結構めざとく公式ページの更新をチェックしていたりするのですが、先日、というか昨日開いてみたらえらい様変わりしいて思わず、「公式続編か!?」と胸を踊らせましたが、そうではありません。

               なんと電脳コイルのBlue-ray Disc Boxが発売されるとのことです。しかも限定版には生原画など山のような特典が詰め込まれるという話。しかも完全受注生産。ふむう。僕ぐらいのディープファンなら絶対必須の一品、それも生涯に渡って大切にすることになるであろう宝物となることは間違いなさそうです。お値段送料込みで39900円......なるほどそれなりに。しかし、全話動画は持っていますが、PS3もあるし買うつもりでいます。

               また、特典の目玉である生原画については公式サイトからの投票で第何話のものになるのかが決まるそうです。普通は最終回とか、第1話とするのがベタですが、僕としては第17話の「最後の夏休み」は譲りませんよ。絶対欲しいのはそりゃあ図書館の前で夕陽を浴びて立つヤサコとハラケンのカットですが、自分の欲しいシーンが手に入るかどうかは投票と運次第。とにかく発売日は11月25日。心して待ちましょう。

               僕としてはこのアニメのブルーレイ化もさることながら、こうしてオフィシャルでまだ電脳コイルが脈動していることがうれしかったりします。昨日など、このニュースが頭に残っていたのか眠りについた時に電脳コイル映画化の夢まで見ましたから。なんか予告編が流れていてですね、ヤサコが出てきてですね、キャッチフレーズっぽいことを言ってるんですね。それは覚えてないですけど。未だに自分のコイルへの情熱が冷めてないことを実感しましたね。本当に映画化しないですかね。一番いいのはアニメの続編ですけどね。

               それからまだ伝えたいことがあるんですよ今日は。いつぞや「川島の本棚」で取り上げたあさのあつこさんの『No.6』。とにかくいつ完結するのかわからない連載ペースの遅さを嘆いたSF小説ですが、この夏フジテレビ系列でアニメ化されます。

               第1話は放送があったんですよね、関東圏では。僕は公式ページで無料配信されている第1話を見ましたが、ふむなるほどなという印象。おそらく原作とはまったく異なったストーリーになるだろうと思いますが、2人の主人公の立ち位置がヤサコとイサコと似ているだけに(男ですけど)、今後の展開に期待です。放送曜日と時間は地域によって異なるようなので、『No.6』で検索してみてください。結構遅い時間帯になりますけどね。

               しかし最近のアニメは映像のクオリティが高いなと思いますね。『No.6』の場合はCGで魅せる近未来(設定2013年ですが)の街並が印象的です。原作の世界観が伝わってきていいですね。

               映像のクオリティで驚いたのは、先日ツタヤで借りて見た『秒速5センチメートル』もそうですね。僕は前から書いている通り、映像に対する審美眼は持ち合わせていませんが、あれはそこいらのアニメとは違う、というのは思いましたね。何を持って味とするのかは人それぞれだと思いますが、アニメを見て情景があれほど綺麗だと思ったのはこれが初めてだったかもしれません。内容は、男子と女子で意見が完全に分かれるようなものですが、男子の僕としては好印象、というか相当泣きましたね。テーマソングがまたいいんですよ。山崎まさよしさんの名曲「One more time, One more chance」。自分自身、ちょっと気持ちがナイーブな時に観たものですから余計に胸につまされたんですけどね。これもおすすめアニメに加えておきます。


               
               今回は割と盛りだくさんの内容でお送りしました。またこちらのブログも毎週更新頑張りたいと思います。それでは執筆ラストスパート。頑張ります。
               
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              『春』要点整理② ー新空間計画の立ち上げー

              2011.05.01 Sunday 23:59
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                 ゴールデンウィーク♪ゴールデンウィーク♪
                 明日も休み、あさっても♪

                 というわけで、その間に僕はせっせと書き溜めをします。

                 前回は頭が痛いという理由で要点整理をサボりましたが、今日はちゃんとやりたいと思います。今回は作中で最も古い時間、コイルス社買収から、新空間計画が立ち上がる2026年秋、アニメの最終回から少し後までの出来事を整理しておきたいと思います。

                 そこでまずはお詫びから。この過去の出来事の真相を明らかにした宏文の日誌パートがあるのですが(第24話 part0)、当初はこれを『研究日誌2019』としていましたが、それでは時間的が矛盾があると読者の方から感想欄でご指摘をいただいて、『研究日誌2021』に変更しました。僕も相当うっかりしていたと言いますか、確認を怠っていました。申し訳ありません。ざっと読み返したところ、第2部などではこの正しい方の時間設定を踏まえていたので、間違えたのはここだけということになります。ご迷惑をおかけしました。

                 この時間設定を念頭に置きつつ、新空間計画の立ち上げまでの紆余曲折をまとめたいと思います。ネタバレ注意ですから、第24話までをご覧になってからこちらはご参照ください。あと、あくまで二次創作としての設定ですから、これをアニメへとつながる正史とは捉えないようにしてくださいね。

                 それから、前回は大事な部分を太字にしてありましたが、なんだか読みにくかったので、赤字を使うことにしました。




                ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

                ・2021年 7月 メガマスがコイルス社買収を正式発表
                 新空間計画の土台となった研究は、すでに猫目技師と小此木宏文によって進められていた。彼らはイマーゴを利用した電脳医療システムを完成させたが、それはイマーゴを持つ子どもにしか治療できないという欠点を持っていた。彼らはその欠点を補う空間、つまり、万人が半永久的に居続けることができる電脳空間(=改良電脳空間)の必要性を感じていた。
                 ところが、その構想中にメガマスがコイルス社を買収。メガマスへの移籍を拒んだ猫目技師は失踪する。残された宏文は、その両方の研究を当分は1人で行うことを決意する。この時、宏文もまたメガマスに対する不信感を抱いていたことから、改良電脳空間に関する研究の一切をメガマスに報告しなかった

                ・2021年 8月 天沢勇子の治療開始
                 今後の身の振り方を思案していた宏文の元に、電脳精神医療を受ける最初の患者が紹介される。兄とともに大黒市内の交差点で交通事故に遭ったというイサコだ。イマーゴを有していることが確認できたイサコは、猫目技師と宏文の構築したイマーゴを利用したの電脳医療を受けることになった。
                 
                ・2021年 9月 宏文の治療と研究
                 イサコの治療が順調に進んでいたので、宏文は改良版電脳空間の研究も並行して行っていた。宏文はこの研究をメガマスには知られまいとしたが、その隠蔽に一役買ったのは彼と親しい間柄にあったメガマス金沢支社研究開発部チーフの平松高雄だった。彼は秘密裏に研究が進められる施設を宏文に用意し、そこで改良版電脳空間の研究を進めさせた。そして、平松は宏文の心中を汲みとり、その研究の詳細を追及することはしなかった

                ・2021年 10月 改良版電脳空間研究の封印・宏文の死
                 順調にあったイサコの治療で思わぬトラブルが起き、宏文は彼女を助け出すために彼女の精神空間に入らなければならなくなった。その空間にイマーゴを持たない自分が入ってしまえば、まず助からないと気付いていた宏文は、ここで自分が抱えている研究を誰に託すべきかを考える。彼はまず、自宅の書斎に試作した改良版電脳空間の中に、その研究資料とこの日誌を封印することにした。
                 あとはこの空間へのアクセスパスワードを誰に残すかだが、宏文はメガマス関係者に研究を託すつもりはなかった。従って、悪いと思いながも協力者である平松にもその詳細を伝えるつもりもなかった。ただし平松は旧コイルス技師達とのコネもあったので、彼にはなんらかのヒントを残すことにした。それは、コイルス社の技師の中でもごく一部にしか解けない暗号で記されたアクセスパスワードと、”コイルドメインの深部”というキーワードだった。
                 しかし宏文は、コイルスの技師でもなく、メガマス関係者ではない第三者に研究を託すのが最善とだと考えた。そこで思い浮かんだのは、彼の後輩で、電脳科学においては名うての存在である小野隆だった。ところが、小野はその時折悪く海外におり、連絡がつかなかったのだ。仕方なく宏文は、その後探しに探して他の研究者にアクセスパスワードを伝えた。(ただし、その研究者は日誌に名前が刻まれていない。アクセスパスワードを伝達する候補として日誌に名前が上がっていたのは、小野のみだった)。
                 その後、イサコを助けに行った宏文は、彼女の命と引き換えに帰らぬ人となった。メガマスはこの事故を受けて、イマーゴによる電脳精神医療には見切りをつけ、研究を打ち切りにするという決定を下す。その後、猫目技師と宏文の研究の一部の技術が応用され、現在の電脳医療の基礎が構築されることとなった。

                ・2021年 11月 神崎始動・平松の変心
                 宏文の死にあたって、メガマス研究開発部の本部長を務めていた神崎は、彼の残した研究資料を整理し、点検していた。ところが、その資料が不自然に少ないことに彼は気付く。不審に思った神崎が調査したところ、平松が宏文の研究の隠蔽に加担していたことを掴む。平松はそれを認めるが、今となっては失われた研究資料を手に入れる方法はないとする。もちろん、彼が宏文に提供していた研究施設には、資料は残されていなかった。
                 神崎は平松の処断を考えるが、しかしそれで失われた資料が手に入るわけではない。そして平松自身も、考えを変え始めていた。
                 そう、宏文の死はあまりに突然だった。平松は宏文の研究に目処が立てば、彼とともに他社に移ることさえ考えてもいた。ところが、その宏文が亡くなり、彼の元にはヒントしか残されず、神崎に処断されるのを待つだけの身となった。彼は自分の無力を恥じるも、これまで積み上げて来たキャリアに裏打ちされた自信を失ってはいなかった。彼はこの時、自分自身の手で宏文の研究を継ごうと思い始めていた。もし、メガマスが宏文の懸念したような商業主義に傾倒したとしても、それは自分の手で軌道修正すればいい。何より、宏文の描いた理想が実現できるのは、メガマスしかないと思うようになった。
                 その考えを平松は神崎に打ち明ける。神崎も失われた技術に大いに興味を示し、平松と協力し合って研究資料を探すことに決めた。

                ・2022年 コイルス一派の動静
                 資料の在処はコイルドメインの深部。それを手がかりに神崎と平松は調査を続けるも、なかなか成果を上げられない。この時点で掴んでいたのは、コイルドメインという空間がどこかに存在し、何らかのアクセス方法があるというぐらいのものだった。
                 しかし神崎は、この時妙な噂を耳にした。それは、メガマスの内部に旧コイルスとつながる一派が存在し、メガネの不具合を軸にメガマスを脅すつもりでいるらしい、というものだった。そして彼らも、コイルドメインへのアクセス方法を探っているということを掴んだのだ。
                 コイルス一派は、平松とは繋がりのない人間で構成されていた。神崎は平松とも相談し、彼らの動静を見守ることにした。
                 すると彼らの手先である猫目宗助は、見事にコイルドメインへの入り口を開いてみせた。正確には、猫目宗助は原川玉子に鍵穴を開かせることに成功したのだ。その時はコイルドメインへの侵入はできなかったものの、神崎は宗助のことを十分使えると判断した。そしてコイルス一派ともども、自らの計画のために利用することにした。

                ・2024年 竹下直樹の卒業論文
                 この年の暮れ。1人の大学生が1本の卒業論文を苦心してまとめ上げ提出した。既に来年度から警察官としての人生を歩むことが決まっていた、国際情報通信技術大学の4回生、竹下直樹。電脳体としてなら誰もが永遠に生きることが可能な空間を完成させる技術を提唱した彼の論文に担当講師小野隆は「実現の見込みはないが、将来的に一縷の可能性を残す」として、ギリギリの卒業合格判定を下した。小野はこの時、猫目技師や宏文が研究していた空間の詳細を、まだ知らずにいた。

                ・2026年 9月 コイルドメインへの侵入、封印資料の発見
                 ヤサコとイサコが中心となって巻き起こった一連の事件において、神崎達もいよいよその時は近いと身構えていた。金沢で開いたコイルドメインへの入り口。そこからサーチマトンを侵入させた神崎達は、アクセスパスワードを用いずに、ついにその深部に辿り着く。そこから封印された資料と宏文の研究日誌を手に入れた神崎達のサーチマトンは、そこが崩壊する前に悠々と引き揚げる。
                 神崎は同時に、泳がせていたコイルス一派にはもう利用価値はないとして、本社を使って彼らをまとめて掃討した。事件の収束に伴って猫目宗助も失踪し、神崎にとっては筋書き通りの展開となった。

                ・2026年 10月 小野隆・香川昭大の招聘、新空間計画始動
                 神崎、平松は引き揚げた資料を見て愕然とする。そこには、改良版電脳空間完成への具体的方法が示されていなかったのだ。
                 一方、日誌の方を見ると、宏文が研究を託したらしき人物に小野隆の名前があった。神崎は即刻小野に連絡をとってこの研究について訊ねる。しかし、小野自身も宏文達の研究をその時初めて知ったのだ。(宏文は小野に研究を託すつもりだったが、彼が海外にいたために叶わなかった)。
                 しかし、小野にはそれが実現できるかもしれないという可能性を感じた。それは宏文達の研究が、直樹の研究に酷似していたからだ。さらに直樹の論文には、宏文達すらも思い至らなかった新しい技術が提唱されており、それを応用すれば十分に改良版電脳空間は構築できると小野は踏んだ。
                 そこで小野は、自分が技術指導を行っているアプリコット社から優秀な人材を神崎に紹介した。それが香川昭大(本名:細川亮成)だった。
                 宏文が完成を目指した改良版電脳空間は新空間と名称を改められ、ここにその実現を目指す、新空間計画が始動した。
                 



                ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

                 以上、新空間計画の立ち上げまでの経緯をざっくり振り返りました。次回はここから、プロジェクト"SPRING"完成に至るまでの約半年間を見てみようかと思います。

                 それでは、よいゴールデンウィークを。









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                『春』要点整理① ー新空間計画とプロジェクト"SPRING"ー

                2011.04.17 Sunday 23:10
                0
                   
                   ども。いつも金曜日に更新している当ブログですが、事情によりこれからは基本的に日曜日に更新するようにしたいと思います。どうせ多くても週に1度しか更新しないので、あまり大した問題ではありませんが、よろしくお願いします。

                   さて、前回に予告していました通り、今回からは佳境を迎えている『春』をより楽しんでいただけるように、また、ここがよくわからないやという部分を残さないために、物語の要点整理をしていこうと思います。

                   今回はちょっと気合いを入れてやりますよ。というのも、書き手としてSF小説において避けなければならないことは、物語が大詰めを迎えているのに、「何が起きているのかさっぱりわからん」と読者の方に思われることだと考えているからです。映像化作品と違って小説は文字だけですから、こういった作品では伝える側も受け取る側も苦労するものだとは思いますが、この長い物語、ここまでお付き合いくださった読者の方に「何が起きてるのかわからん」でリタイアされてしまうのはあまりに忍びありません。

                   ということなので、1回目の今回は物語の核にして二本柱、「新空間計画」と「プロジェクト"SPRING"」の概要をできるだけわかりやすく解説していきます。この2つの概要が理解できれば、物語を読み進める上で障害はないと思います。それを意識して作中でも解説めいたものをくどくど書いているのですが、それではテンポや分量の問題であまり好ましくはありません。できれば以降は物語を進めることに集中していきたいので、ここでしっかりと整理していただければと思います。

                   もちろん、例によってネタバレ要素満載でお届けしますので、最新話まで未読の方はご注意ください。



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                   さて、まずは「新空間計画」の解説を始めます。これこそが物語の肝であり、これを中心にして物語がまわっていると言っても過言ではありません。「プロジェクト"SPRING"」も、竹下直樹の「永遠の命計画」も、平松部長の「名もなき計画」も、「新空間計画」の完成ありきで立案されたものだからです(「永遠の命計画」と「名もなき計画」も、余裕があれば後日解説します)。この計画を理解していただくことが、まずは第一歩ですね。

                   と言いましても、非常に概要は単純明快です。新空間とはアニメで登場したCドメイン、古い空間の原型となったイサコの心の空間の発展系で、イマーゴの子どもしか入ることができなかったそれらを、誰の電脳体も永遠に居続けられるように改良したものです。「新空間計画」とは、その新空間を完成を目指したプロジェクトということになります。

                  「新空間計画」の起こりは近いうちに振り返ろうと思いますが、それはあらゆる人の思惑が飛び交う中で立案され、進められたものでした。そして、完成した新空間にはある特徴がありました。それは、新空間は現実世界のパラレルワールドということです。

                   太字にした部分はとても大事なところです。もちろんテスト範囲ですので、ノートに取っておきましょう。というのは冗談ですが、そのくらい押さえておいてもらいたいポイントです。パラレルワールドということは、皆さん、あれですよ。自分とまったく同じ人間がそこで生活しているのです。

                   人間というと少し語弊がありますね。正確には自分とまったく姿形、思考を持った電脳体が生活しているということになります。

                   なぜそんな空間が作られたのか。一言で言うなら神崎氏がごり押ししたからです。それにはこの後説明するプロジェクト"SPRING"が絡んできますが、ここでは詳しい経緯は割愛します。姿形のコピーはともかく、なぜ思考の再現ができるのか、という疑問には第2部の最終話「徒花の咲く庭 part11」で詳しく説明しています。それでもわかりにくければ、これも後日解説します。

                   思考の再現とは、自分とまったく同じ記憶、同じ論理系統を持つAIを用意するということです。そしてそのAIを自分の姿をした電脳体に接続することで、いわば自分のデジタルクローンは完成します。

                   「新空間計画」の超重要な点はこのくらいです。それでは次のプロジェクト"SPRING"の解説に入る前に、その前提として理解が必要な電脳体分離の仕組みに対する僕の解釈をおさらいしておきましょう。

                   そう、あくまで僕の解釈を前提にしないと『春』という作品は成り立たないのです。この問題に対する解釈は多種多様だと思いますが、ともあれ、僕の解釈を理解して作品に向き合っていただきたいと思います。これも以前に当ブログで解説しましたが、念のため簡単にもう1度説明しますね。詳しい説明は、創作日記(5)をご覧ください。

                   その時も太字にしたのは、分離中の電脳体を動かしているのはあくまでも肉体の脳という部分です。ものすごくおおざっぱな解説をしますと、電脳体分離の最中は、電脳体に方に脳が移ると考えてください。そして、取り残された肉体は脳の部分だけが空白になった抜け殻と考えてください。電脳体分離時には脳がすっぽりと抜け落ちた状態になるので、肉体を自由に動かすことはできないということになります。

                   ちなみに、第24話「プロジェクト"SPRING" part1」で、小野先生が交感神経や副交感神経がどうのこうの説明する場面がありますが、あの話はまったくのデタラメです。あれは神崎達が本社を騙すために考えてきた嘘なので、あの話は完全に忘れてくださいね。

                   では、プロジェクト"SPRING"の話をします。"SPRING"とは、人間の神経伝達機能の役割を果たすシステムという意味の英文の頭文字をとったものですが、まあ細かいことは気にしなくてもいいでしょう。プロジェクト"SPRING"の目的は、電脳体分離で脳が電脳体の方に乗り移って取り残された肉体に、人工知能AIを移植するというものです。

                   これはおそらく図で示した方がよくわかると思います。下にまとめたものをご覧ください。なお、通常空間とは現実世界のことを指していることとし、先ほど説明しましたが、新空間では自分のデジタルクローンが生活していることを踏まえて見てください。
                   

                  正常時           "SPRING"起動時
                   通常空間 肉体ー脳      肉体ーAI
                    新空間 電脳体ーAI       電脳体ー脳


                  という、入れ替わりが起こるということですね。作中のハラケンは"SPRING"起動時の状態にあります。彼のAIは記憶を一切持たされなかったため、傍目から見れば記憶喪失になったということになります。

                   このプロジェクトの本質は、AIを操作することによってその人の行動を電脳的に操れるようになるということです。これこそ神崎氏が是が非でも実現したかったことであり、そのためにサオリや宗助の肉体は実験に使われていた、ということになります。

                   ちなみにですが、電脳体そのものはコピーが可能という設定です。通常空間で肉体と重なり合っている電脳体と、新空間の中でAI接続されて生活している電脳体が存在するので、本来的には2つの電脳体があるということになります。

                   そして細かい話になりますが、同じ空間内に同一の電脳体が存在してはいけないという法則もあります。ハラケンの場合を例に説明しますと、彼の電脳体は第三小学校の事件で新空間に連れて行かれました。あくまで連れて行かれたのは、肉体と同期していた電脳体です。つまりこの時点で新空間の中には、2つの電脳体、2人のハラケンが存在することになります。そして、上記した法則に従えばこれはゆゆしき事態ということになります。この矛盾を避けるため、どちらか一方の電脳体は抹消されなければなりません。その時優先的に抹消されるのはコピーの方、つまり元々新空間の中で生活していたAIを伴った電脳体なのです。そして、そのAI抹消の役目を負っているのは新空間の神、ミチコということになります。

                   つまりオリジナルのハラケンは今も新空間の中にいます。そして、コピーのハラケンは新空間から存在を消されているのです。その消されたハラケンのAIは、今度は肉体に宿ることになったということですね。

                   この話に関連して、皆さんは覚えておりますでしょうか。第2部のまだ前半戦、イサコと金沢黒客が学校の中でサオリの行動を見張っていた話がありました。その時イサコとシュウイチは、レインとカズマの幻影らしきものを見ます。その時の彼らは、学校の中で開いてしまった入り口から通常空間に入り込んでしまった新空間の住民だったのです。新空間から通常空間へと入ってしまったハラケンとは逆パターンですが、彼らもまた法則により抹消されてしまったわけです。

                   ということで、物語の骨格を形成する2大プロジェクトについて要点は列挙できたかなと思います。これを理解いただければ、おそらく物語の展開に取り残されることはないかと。また質問がございましたら、遠慮なくどうぞ。

                   次回も要点整理をします。作中の出来事を過去の話から時系列順に並べたいなと思っておりますので、こちらもよろしくお願いします。  
                   

                   

                   

                   
















                   
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                  創作日記(5) SF的要素の独自解釈について

                  2010.12.17 Friday 23:05
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                     今回の創作日記は少しまじめな内容です。電脳コイルにおけるSF的要素の考察は、「古い空間の仕組みとは?」など、このブログでは幾度にも渡って行ってきました。しかしこれまで電脳コイルという作品のすべてのSF的要素を取り扱ったわけではありません。『春』の中では原作の設定を僕が勝手に解釈した要素が多分に含まれています。そこで、今回はその点についてお話していきたいと思います。まずはその前に少し前置きをさせてください。

                     僕は小説を執筆するにあたって、少しばかりネットでそのノウハウを検索したことがあるのですが、特に二次創作で大事なことは、原作の設定に対して作者独自の解釈を加え、オリジナル性を引き出すことだそうです。電脳コイルの設定やガジェットは幅広い展開が可能で、100人が書いたら100通りの『電脳コイル』が出来上がるのではないかと思うほどですが、僕も『春』においては遠慮なく自分のオリジナル要素を盛り込んでおります(『いざ、決着の時』のバーチャルゲームなどは良い例です)。しかし僕はこの点においては不得意であることを自覚しており、例えば此花さんの『冬を〜』や『3.00』に登場する新電脳アイテムなどは、原作に対する深い解釈とたぐいまれな想像力の産物で、それを生み出せる力というのは素直にうらやましく思っている次第です。

                     以上のように、まずオリジナル性を出すには、原作の設定に対する正確な解釈が求められます。ただし、このようなSF作品ともなると、その解釈も人それぞれ違うと思います。要するに、ある設定に対して、僕がどう解釈し、作中でどのように描いているのか、それを説明する必要があるように思われたわけです。これを説明しないと『春』という作品のすべてを読者の皆様にお届けできませんよね。

                     ということなので、僕が独自解釈している原作の設定を例として列挙していきますので、それぞれに対する僕の考えを説明させてもらいます。

                     

                     例1 物理結界は肉体にも有効なのか?
                     
                     物理結界は皆さん御存知ですよね。サッチーのような電脳体が通れなくなるという代物です。『春』で言いますと、この暗号を使ってヌルを封印するというシーンがありました。でも、ここで純粋な疑問。普段、人やナマの生き物達は肉体と電脳体がぴったりと重なっている状態にあります。では、そのごく正常な状態で物理結界の上を通ろうとしたらどうなるのか。僕の答えは上述したシーン(第12話)に描写したのでまた見てもらえたらと思うのですが、これは通ることが”できる”と思います。
                     考えてみたら当たり前の話で、ごく正常な状態であるならば電脳体が肉体を制御することなんてできないと思うのです。電脳体分離を起こしていないかぎり、主導権はいつも肉体にあるという僕の考えは、後で触れることにします。
                     ですが、それは物理的には可能なのであって、ここにはまた別の問題も絡んできます。それはどういうことか。物理結界を突き破るということは、現実世界と電脳世界に矛盾が起きるということになります。その矛盾を強引に打ち破ったしわ寄せは、メガネにいくと思います。つまり、電脳世界で通れるはずがない道を通ってしまったということは一種のバグで、メガネのデータ処理に多大なる影響を与えるはずだからです。要するに、それをするとメガネがパンクしてしまうかもしれないということです。そんな危険を冒して、わざわざ物理結界に突っ込もうとする人はいないでしょう。(ただ、上述した当該シーンは一種の極限状態なので、ここで述べたことはあまり意味をなしていません)。したがって、正常な人間が物理結界を通過することは不可能ではないが、わざわざそれをやろうとする人はいないというのが僕のこの問題に対する結論です。

                     例2 電脳体分離の仕組み
                     
                     これは直近のお話で取り上げた問題です。おそらくあの説明で納得できる人の方が少ないと思いますが、これはこの物語の肝でもあるので、ご理解いただければ今後もより一層お話がわかりやすくなるというものでもあります。ですのでこれについては一応の説明をここで行いますが、わかりにくいというご意見があればまた言ってください。後日また丁寧に説明させていただきます。
                     電脳体分離の仕組みについて、僕の解釈でのポイントは、分離中の電脳体を動かしているのはあくまでも肉体の脳ということです。あの人の言葉を借りると、「電脳体分離とはすなわち、脳指令の出力先が肉体から電脳体へと切り替わること」となります。
                     先ほどの問題でもありましたが、まず、正常な状態において脳が指令を出しているのは肉体です。その動きが街頭カメラや他人のメガネにキャッチされ、寸分の狂いも時差もほとんどなく、電脳体に反映されているということなんでしょう(多分)。その状態においては肉体に主導権があると僕が考えるのはそういう理由です。
                     ところがひとたび電脳体分離を起こすと、まず脳指令はメガネの量子回路に吸収されます。そして量子回路はアンテナとなって、その脳指令をデジタル変換したものをサーバーに転送します。サーバーはその脳指令を読み取り、対象者の電脳体はおそらくこう動くであろうと推測し、それを電脳体に反映させます。そしてさらに、サーバーはその電脳体が見ている景色、聞こえている音、いわゆる五感で感じ得るものすべてを読み取り、量子回路にそのデータを送ります(これは電脳ペットと同じ原理です)。量子回路はそのデータを、脳指令をデジタル化する時と逆の手順で神経伝達物質に変え、肉体の脳に送る。すると脳は、電脳体が感じているすべてをまるで肉体が感じているかのように錯覚するという仕組みなのではないでしょうか。(余計話をややこしくしただけのように思えますが大丈夫でしょうか)。
                     つまるところこの解釈をすると、分離を起こした電脳体は、肉体とほぼ同様に視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を有しているということになります。それがあってこその新空間計画ということになるわけですけどね。(詳しくは第21話を参照ください)
                     あまり細かい設定を気にしても仕方ないですし、実際論理的には矛盾だらけの解釈だと思うのでこれは頭の片隅に置いておく程度で構いません。大事なのは、分離中の電脳体を動かしているのはあくまでも肉体の脳であるということです。僕の独自解釈のポイントとして、それだけ押さえていただければと思います。

                     今回は2つしか例をあげられませんでしたが、また思いつき次第、今後も説明を加えていきたいと思います。また、今回の内容でわからないというところがあれば質問してください。

                     さて、もうあれですね。再来週は大晦日でブログどころではないでしょうから、来週が年内の最終更新ということになりそうです。またそうですね、今年1年を振り返りましょうか。いつもこんなことをしている気がするので、また内容は考えておきます。それで来週ですが、クリスマスとか関係なくスケジュールが立て込んでいるので、土日のどちらかで更新できればと思っています。『春』は頑張って年内のあと2回とも更新しようと思っています。それでは、よいクリスマスを。


















                     
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                    創作日記(4)

                    2010.12.10 Friday 23:33
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                       先週は慢性的に胃腸の調子が悪かったのですが、ヨーグルト毎日食べていると治りました。あれは腸の調子を整えてくれますからどっちの症状にも効くんですね。薬を飲むよりも経済的です。

                       では今週も書いていくとしますか。そろそろキャラクター論にもネタが尽きてきたような気がしますが、今回はまだ触れていなかった第2部の登場人物に焦点を当てます。

                       第2部のキャラで、第3部まで引き続きメインとして登場するのは酒井修一と大谷記者ですね。また、桐野サオリもいずれ必ず登場するはずです。後のメンバーは、基本的には出番終了ということになります。残念ながら。もちろん、顔見せ程度の登場があるかもしれませんが。

                       ということなので、今回は出番の終わってしまったメンバーを中心に紹介していきます。

                       ではまずは金沢黒客リーダーの岩渕玲音から。レインと書けば外国人のようで、容姿もハーフに見える設定ですが生粋の日本人。この設定にしたのは、僕の友達にそういうのがいるという理由だけなんですけどね。ポイントはソフトモヒカンで野球少年というところです。マニアックな話をすると、来季から楽天でプレーすることになった元メジャーリーガーの岩村明憲がTBレイズという球団にいた頃、ソフトモヒカンをチーム内に流行らせていました。それがチームの結束を固め、弱小球団だったレイズが一気にリーグ優勝を成し遂げたため、一部ではそれが伝説として語られることになったのです。レイン君の名前や髪型は、すべてこのエピソードから来ていたりします。しかし、彼はクール設定なんですけどよくしゃべりましたね。もう少し口数減らして上げた方が良かったかもしれません。

                       そしてレインの相方でボケ担当の平尾和馬。この人はもうちとバカっぽさを出してあげたかったなと思いますね。まじめな話になると話に入ってこれなくなるのはかわいそうでしたが、要所では活躍していた気がします。イサコの第一印象では筋肉バカのゴリラとなっていたと思いますが、それでも優しい心の持ち主です。多分、金沢黒客の中ではもっとも情で動くタイプだと思います。

                       それからイサコの相方だった秋吉結衣ですね。活発で天然というのは、電脳コイルではいないキャラだったような気がしたので、彼女はそのような設定に。小学生の面影を残してはいますが、本当は誰よりも人の気持ちに敏感で、その人の悩みをまるで我がごとのように抱え込んでしまうところがあります。こういった裏表のない純粋な子に、イサコの友達になってもらいたいという願望もありました。いずれ金沢においての親友として、これからイサコと支え合ってもらいたいですね。

                       そのユイとは対照的に、終盤でイサコから離れていった井上安紗美。最終的には和解してめでたしとなりましたけど、彼女を裏切らせるか否かには相当悩みました。結局のところ、こうしないとアサミというキャラの存在が非常に薄くなりそうな気がしたので、ああいう役どころに。つまり当初はそういうつもりで書いたキャラではなかったということです。ホントのところはアイコ的なポジションにしようかなと思っていましたが、キャラが被るのも芸がないと、試行錯誤していくうちに成り行きでああなってしまいました。少し申し訳なく思っているキャラです。

                       あと、イサコの担任の松葉茂というのがいたんですが、彼も当初は終盤戦に絡ませようと思っていたものの、どうもいい展開が思いつかずにちょい役になってしまいましたね。それからイサコをいじめる速水エリナには、まあまあ満足しています。彼女がイサコを責めるシーンは、どのくらいのことを言わせたら良いんだろうかと悩みましたけどね。結果的にはああなった次第ですが、あれは言い過ぎだったのか、まだまだぬるかったのか、未だに僕自身わかっていません。アニメでもイサコが嫌がらせに遭うシーンがあって、今度はあれ以上のひどい目に遭わせないといけないと思っていたんですが、実際どうですかね。

                       ではまあ、今週はここまでということで。来週もキャラ論にするのか、他の話題に移るのかはまだ決めておりませんが、年内の更新も残り少なくなってきましたので気合いを入れて書きたいと思います。それでは。




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